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制作こぼれ話

戦国の長柄鑓(歴史群像86号)

信州上田に武田軍の槍衾を見た!

撮影には上田城の門前(東虎口櫓門)をお借りしました。上田は武田に属した真田家縁の地、ということで撮影時の背旗は六文銭を使用。

編集・次郎太郎は、長柄鑓との比較用に穂先十文字の鑓を使用。ちなみにこちらも博物館の収蔵品で、もちろん本物であります。

長時間の「鑓持ち」のおかげで後半はかなり疲労困憊。貴重な鑓を痛めないために、人工芝を置くなど、細心の注意を払いながらの撮影でした。

 大河ドラマ『風林火山』のヒットもあって、戦国時代への関心が高まっているようです。戦国時代といえば合戦のイメージは切り離せないものですが、今回ご紹介するのは、合戦の必需品、「鑓(槍)」。その中でも、長柄鑓と呼ばれる長いものです。詳しくは発売中(11月7日現在)の「歴史群像86号」をご覧いただくとして、まずは取材した長柄鑓について簡単にご説明を。
 合戦においては消耗品である長柄鑓は、現存するものが少なく、本当に合戦で使われた遺物に出会う機会はほとんどないといっていいほどです。しかし、『風林火山』の物語の舞台でもある信州(長野県)の上田市立博物館(上田城内にあります)には、長篠合戦で武田軍が使用し、合戦の結果、藤井松平家の戦利品となって代々伝えられた長柄鑓が保存されています。この貴重な遺物を、博物館の協力で取材させていただきました。
 で、取材といっても、ただ写真撮って説明を聞いて……では終わらないのが歴史群像。実際に使用されたであろう状況を想定して、甲冑着用の上、槍衾をCG再現してみよう、という段取りに相成りました。
 取材を決行したのは9月の末。まだ暑さが残っている時期で、しかも、ロケには有難いですが、甲冑を着用する人間にはそれなりに拷問の「快晴」という空模様。しかし、実際に使用状況の再現を試みたおかげで、非常に有意義な取材になりました。
 実際に長柄鑓を構えてわかったことは、細く、よく撓う(しなう)こと。横に構えると穂先はかなり下を向きます(地面と平行に構えると、15度程度下がります)。しかも、この状態だと重さがもろに手にかかってくるので、取り落とさないように(なにしろ貴重品なので)するだけでも腰や腕が悲鳴をあげます。
 「これで相手を突き刺すのはかなり難しいですねぇ」
というのが、長柄鑓を持った編集・藤四郎の感想。
 「それに横向きは構えづらいし、重い~」
 ロケは4時間近くに及びましたが、頻繁に鑓を上げ下ろしした編集・藤四郎の顔から次第に余裕がなくなります。
 「マジできついんです……ちょっと休んでいいですか……」
 長柄鑓は、突くのではなく、叩くか、あるいは一定の角度で構えて槍衾を作るといった目的で使用します。しかし、長柄鑓隊が敵を叩く動作を行う場合は、何度も上げ下ろしを行うわけで、実際に合戦でこれをやると非常に重労働になることが身をもって体験できた次第。編集・藤四郎の肉体労働の成果は、巻頭カラーの槍衾や、通常の鑓との実写比較でご覧いただけます。
 長篠合戦で、武田軍は一敗地にまみれます。名のある武将が数多く落命したことで知られる長篠合戦ですが、名も知られぬ長柄鑓足軽も数多く倒れたことでしょう。長柄鑓の全貌に触れるとともに、労苦多く、されど歴史に名を遺すこともなかった長柄鑓足軽の往時の姿を偲んでいただければ幸いです。

(文=熊右衛門尉)