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制作こぼれ話

ドラマ『坂の上の雲』軍艦撮影事情(歴史群像93号)

“着せ替え”可能な陸上セットで日清・日露の艦隊戦を撮影中!

「今の柔な生き方をしている自分たちからは想像を絶するような感覚で、世界の物事を見ていた明治の軍人の覚悟とともに、一人の人間である真之さんの人間味みたいなものが重要で、軍国主義が定着した昭和の軍人ともまた違うであろう、その人間味を出すのがとても難しいと感じています。」と話す、秋山真之役の本木雅弘氏。帽子の持ち方などの立ち居振る舞いも旧海軍の方に指導を求めていました。

本木雅弘氏合同インタビューの後に、セットの見学会が行われました。ぬかるんだ土の上から乗艦し、見上げれば確かにマストが足りないのですが、さすがに大きいセットだけあって艦に乗り込んだというリアルな実感が持てる部分もありました。本来は樫材で造られている甲板もベニヤ板で代用されていましたが、表面はまったく違和感のないように仕上げられていました(但し、足音には注意です)。

露天艦橋。ここの羅針盤などは、骨董品店で同時代のものを探して取り付けた“本物”。小道具として似せて作るよりも探して購入したほうがまだ安上がりだということで必死に探したのだとか。背景に建築素材などが写り込んでいるのはご愛嬌です(ドラマではブルーバックにして背景を合成します)。

艦首と艦尾、マストなどはCGで追加するため中央部のみの奇妙な“艦”が、土の上に配置されています。この日撮影した横浜港での「筑紫」引き渡し式のシーンですが、実はそれを見る真之の側は昨年5月に熊本県宇城市の三角西港(みすみにしこう)で撮影済み。今回は真之の視点から見た、海兵たちの登舷礼のシーンが撮影されました。

 歴群NEWS(P141)でも触れましたが、昨年12月、今年秋に放送が始まる司馬遼太郎原作のNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』のロケに行ってきました。
『坂の上の雲』は、07年11月に神奈川県横須賀市の「三笠」の艦上でクランクインした後、国内では茨城、福島、愛知、広島、愛媛、京都などで撮影を行い、海外ではロシア、中国、フランス、イギリスでロケを実施するなど、かつてないスケールで足かけ3年に及ぶ撮影が行われています。
 このスペシャルドラマのロケ取材会があったのは、昨年9月の中旬に起工し11月中に完成したという埼玉県川口市に組んだ軍艦のオープンセット。撮影シーンは日清戦争時の巡洋艦上のカットで、具体的には軍艦「筑紫」が登場する第1部第1話の一場面(1883年9月、日本がイギリスから購入した「筑紫」が横浜港に入港。その引き渡し式が甲板で行われるシーン)と、第3話の一場面(1894年7月、日本の連合艦隊に出撃命令が下り、先発隊として巡洋艦「筑紫」に乗り込んだ海軍少尉・秋山真之は、朝鮮半島沖で清国の艦隊と遭遇。艦内に緊張が走るシーン)です。
 明治時代の艦に多く見られた露天艦橋を持つこのセットは、喫水から下とマストの上部、艦首・艦尾を持たない、高さ16メートル全長35メートルの“陸上艦”。実は日本の巡洋艦「浪速」(全幅14.1m、吃水5.6m)をベースに制作されており、昨年11月下旬のロケではこのセットは「浪速」として使用されています。今年1月のロケでは清国の戦艦「定遠」として、さらに日露戦争のシーンではロシアの戦艦として…といった具合に、今年2月半ばに解体されるまで、艦橋の位置や煙突・主砲周辺の形状を変えて使い回される予定なんだとか。艦首・艦尾と全幅・喫水の違い(例:「筑紫」=全幅9.7m、吃水 4.1m )などは最新のCGとカット割りなどの撮影技術で対応するとのこと。
 秋山真之役の本木雅弘氏は「とにかくあっという間で、足かけ3年のうち1年の撮影がもう終わったという実感がなかなか湧かないです。しかし、実在した秋山真之さんにあこがれ懸命に背伸びするような気負いが少しずつなくなり、役が体になじんできたように思います。明治というのびのびした時代の空気感や、青年の希望の深さ大きさが、その日その瞬間を役を借りて生きている僕らの取り組みにオーバーラップしていけばいいなと思っています」とコメント。また、海外ロケで出会った現地在住の日本人に、日本を出てから司馬作品のファンになったと言われることが多いと告白し、「そういった海外から日本を客観的に見て懐かしみ味わっている方々も痺れさせたいですし、経営者のバイブルと言われるくらいに非常にコアなファンがたくさんいらっしゃるこの作品の良さを凝縮して、この映像版『坂の上の雲』で若い方たちにもアピールできたらと思っています」と締めくくっていました。
 なお、今年11月29日から12月27日まで毎週日曜午後8時~9時半に5回にわたって放送する第一部、及び来年の第二部、2011年の第三部、全13話のサブタイトルは以下の通りです。よろしければ原作を読み返す際の参考にしてください。

第1部(2009年11月放送予定)
 第1回「少年の国」
 第2回「青雲」
 第3回「国家鳴動」
 第4回「日清開戦」
 第5回「留学生」

第2部(2010年秋放送予定)
 第6回「日英同盟」
 第7回「子規、逝く」
 第8回「日露開戦」
 第9回「広瀬、死す」

第3部(2011年秋放送予定)
 第10回「旅順総攻撃」
 第11回「二〇三高地」
 第12回「敵艦見ユ」
 最終回「日本海海戦」

(文=門脇弥沙)