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制作こぼれ話

ロシア連邦空軍中央博物館(歴史群像107号)

※前号掲載の歴群フォーラムにて好評だった「特別レポート」を拡大してご紹介します。

もうひとつの航空史を実感できる世界最大級の航空博物館
 モスクワの東約40kmにある小都市モニノは、ロシア空軍揺籃の地のひとつ。基地としての機能は失っているものの、ガガーリン空軍アカデミーの生きた資料「ロシア連邦空軍中央博物館」として一般に公開されている。帝政ロシアからソ連、ロシア連邦共和国までの軍用機、旅客機、ヘリコプター約170機が収蔵されている。
 大多数の機体は野原に無造作に置いてあるだけが、第二次大戦までの機体は格納庫2棟にも収められている。歴史群像読者ならば、ドイツ戦車キラーの殊勲機イリューシンIl-2「シュトゥルモヴィーク」と、日本陸海軍と戦ったポリカルポフI-16は見逃せない。さらに屋外展示場には、ツポレフTu-4爆撃機(ボーイングB-29爆撃機の完全コピー)から始まる戦略爆撃機群、戦闘機の代名詞であるMiGが番号順に並んでいる姿は圧巻。また超音速旅客機ツポレフTu-144を含む旅客機コレクションも充実していた。
 ソ連軍の歴史だけではなく、西側とは異なる航空技術史を見ることができ、世界遺産なみの価値がある。かつては軍事機密地域であり禁断の博物館だったがソ連崩壊後、訪問が可能となった。(2011年現在、パスポートがあれば事前申請なしで入場できた。)106号では博物館までのアクセスを掲載したが、代表的な機体をいくつか写真で紹介したい。

イリューシン IL-2 対地攻撃機「シュトゥルモヴィーク」。エンジンと操縦士、燃料タンクをバスタブ型の重装甲で守る生存性が高いのが特徴。軍用機として世界最多の36,183機製造され、ドイツ戦車キラーとして対独戦の殊勲機となっている。北朝鮮軍と中国義勇軍が朝鮮戦争でも使用。

ポリカルポフ I-16戦闘機のレプリカ。ノモンハン事件では、日本陸軍九七式戦闘機に一撃離脱戦法で戦い、日本海軍の中国爆撃では九六式陸上攻撃機を撃墜した。

シコルスキー「イーリヤ・ムーロメツ」4発爆撃機のレプリカ。1914年から帝政ロシア軍が第一次大戦で使用した、当時としては驚異の超大型高性能機。シコルスキーはアメリカに亡命しヘリコプター開発で成功する。

ソ連戦闘機の代名詞、ミコヤンおよびグレビヴィッチ記念設計局によるミグ戦闘機群。MiG-9、MiG-15、MiG-17(機体番号01)、MiG-19(11)、MiG-21(93)、MiG-23、MiG-25(25)、後方にツポレフTu-144超音速旅客機、その左下が「現代のシュトゥルモヴィーク」スホーイSu-25対地攻撃機。

イリューシンIL-95戦略爆撃機。NATO名はベア。アメリカ本土を核攻撃可能な爆撃機として1952年に初飛行し現役に留まる。ターボプロップで低速で回転する二重反転プロペラと後退翼の組み合わせにより、最高速度925km/hの世界最速の実用プロペラ機。哨戒偵察型は日本の防空識別圏にたびたび侵入し「東京急行」として知られる。手前の尾翼はB-25爆撃機。

前方右がミルMi-24攻撃/輸送ヘリコプター、左が輸出型Mi-25。NATO名はハインド。重武装で制圧しながら歩兵部隊により急襲するヘリボーン任務を行い、アフガニスタン侵攻やその後の地上作戦の中核となった。ベトナム軍がカンボジア戦で、イラク軍がイラン、クウェート侵攻など、世界各地でも使われた。生存性に問題がありスティンガー携行対空ミサイルで撃墜可能だった。その後方に二重反転ローターのカモフKa-25対潜哨戒ヘリコプター、脚が長いミルMi-10輸送ヘリコプター。

朽ち果てて行くバルティニ・ヴェリエフ VVA-14M1P 表面効果実験機/対潜哨戒機。主翼もエンジンももげて、巨大生物「王蟲」の亡骸のように物悲しく横たわっている。NATOでは「カスピ海の怪物」と呼ばれ、海面上の表面効果を利用して、高速で海面上低空を飛び、ポラリス潜水艦を駆逐する予定だった。

INFORMATION
ロシア連邦空軍中央博物館 Центральный музей Военно-воздушных сил РФ
HPアドレス monino.ru (ロシア語)
開館時間:月・火・木・金 09:30-13:30、14:15-17:00
土 09:00-14:00
休館日:水・日
電話:(095) 526-3327 (国番号7)
*旅行計画時に必ず開館時間等を再確認してください。パスポートの提示を求められます。
<アクセス>
モスクワの地下鉄コムソモーリスカヤ駅に隣接するヤロスラフスキー駅から、モニノ(Монино)行またはフリャゼボ(Фрязево)行近郊電車で約1時間、モニノ駅下車。徒歩20分。

※詳細な地図は106号P.143をご覧ください。

(写真・文=神野秀雄)