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制作こぼれ話

侍 騎馬戦闘術 (歴史群像105号)

迫力の騎馬術を目の当たりにした流鏑馬演武

大鎧姿の森代表。甲冑は甲冑師によって作られた物で、畠山重忠が御岳神社に奉納したと伝わる大鎧の写し。ただし森氏は185センチを超える巨漢のため、大きかったと言われる畠山重忠のさらに1.2倍で作られています。

流鏑馬演武の前に扇で馬場を清める儀式。先頭を行く松本氏は倭式騎馬会きっての若手女流射手で、大学の馬術部出身。最近めきめきと腕を上げ、この日もほぼ全的中の成績でした。

 この特集で協力をいただいた倭式騎馬会様とは5年来の付き合いです。以前から流鏑馬など、伝統的武道行事を見ることが好きだった私・福岡が、会代表で武道家の森顯氏と偶然知り合い、その後、さまざまな機会で剣術・抜刀術・流鏑馬などの演武をしていただいています。
 森氏の武道探求と伝統武道復興に対する情熱は尋常ではなく、ライフワークにしている鹿島伝直新影流の修行では、正統を伝えている人がいると聞けば、全国どこへでも臆することなく訪ねて行き教えを乞うという、まさに古の武道家そのままの修行をしている人です。 
 また、騎馬術では従来の流鏑馬には飽き足らず、江戸期以前の形を文書から復興しようと試みているということは本誌にも書きましたが、さらにそのようなテクニックのレベルを超えて、あくまでも和駒にこだわり、和駒同士のかけあわせで馬そのものまでを復活させようとしているという、途方もない野望を抱いている人なのです。
 そのような森氏の姿勢が、実験的な編集部の考え方と一致し、今回の取材を実現させたといえます。
 さて、誌面でお伝えできなかったことは、まず「鏑矢の音」です。今回は取材の前に、埼玉県嵐山町のお祭り行事として流鏑馬を演武したのですが、初めて快心の音を聞きました。というのも、これまで何度か鏑矢を飛ばす演武を見ることがありましたが、なぜかほとんど音を聞いたことがありません。「軍記物でも有名な戦闘合図としての鏑矢の鳴る音を聞いたみたい」と前から思っていたのですが、「ぴぃゆ~~ん」という独特の音に納得がいきました。鏑矢は重たいため、あくまで強い弓で飛ばさなければ音が鳴らないのでしょう。今回は曲射で200mほど遠くに飛んだので本来の音が出たのだと思われます。これが飛び交うならばどんなに迫力があるかわかりません。そのうちムービーで取材を行いたいと思います。
 演武中のアクシデントとしては、副代表の菅野氏が、二間槍の演武中に落馬してしまったことがあります。菅野氏は相馬出身、「野馬追い」で鍛えた乗馬の名人です。職業も蹄鉄師で、荒馬でもロデオのように乗りこなします。槍を馬上で自在に振り回すのが得意で、特に通常一間槍で演武していたのを、最近では実験的に二間槍にチャレンジしていたのです。
 しかし、菅野氏自身は疾走する馬から槍を突き出すということには否定的で、突いたらすぐ引き抜かなければ自身が落馬してしまうと言います。そこで馬上からは突くのではなく振り回すのだという考えで、演武されていたのですが、たまたま下げた穂先が、馬場を仕切るロープに引っかかり、まさに敵を突いたままのようになり、それを実証するように落馬してしまいました。百聞は一見に如かずと言いますが、まさに馬と槍の関係を考えさせられ一幕でした。
 ともあれ馬と武術について考えたいという人は、流鏑馬の見学をお勧めします。なんといっても競馬場より馬が近くを走るので、その迫力を目の当たりにできます。きっと馬に対するイメージが少し変わると思いますよ。

流鏑馬の演武の前に神事として鏑矢を天と地に向けて構え、その後、実際に天に向かって放ちます。写真は昨年、鹿島神宮の流鏑馬で森氏が鏑矢を放たんとするところ。

二間の槍を振り回し、馬を全力で駆けさせる菅野氏。この後槍先が誤ってロープに引っかかり、まさかの落馬をすることに・・・。疾走する馬から敵を槍で突くことは不可能?

(文=福岡直良)