制作こぼれ話

「ウォー&ピース・ショー」のマニア達(歴史群像115号)

キャンプしながら戦車取材

来場者で賑わうショップ・エリア。出店数も多く、このエリアだけでもゆっくり見ると1日ではまわれないくらいだ。

展示準備のため、塹壕を掘る第一次大戦イギリス軍のグループ。スコップは当時と同型のものを使用し、土嚢の積み方や鉄条網の支柱にはマグカップや帽子をかけるなど、準備段階から当時を再現している。

セントーMk.Ⅷ巡航戦車をベースにしたドーザー戦車。赤さびに覆われているが、比較的状態は良いようだ。数年後にはレストアされて会場を走り回っているかもしれない。

アトラクションに登場したアメリカ軍M8グレイハウンド装甲車。6輪駆動を生かして泥濘のアリーナ内を軽快に走り回っていた。

アリーナで行われるメイン・イベントがコンバット・アトラクションだ。今年はアリーナの中央に建物を造り、第二次大戦のヨーロッパ戦線などのストーリーで行われた。

 4年ぶりに訪れた「ウォー&ピース・ショー」。これまでの参加経験があっても現場に着くと興奮は隠せないものです。ロンドンへ到着したその日に会場へ移動し、帰国するまでキャンプしながらの取材が始まりました。
 会場内での移動は徒歩。以前には日本から折畳自転車を持って行ったり、会場で中古自転車を購入するなど徒歩以外の移動手段をとりましたが、今回は自分の足のみ。到着した翌日から取材を始めて、展示エリア、アリーナ、買い物、トイレ、シャワーへと一日中歩き続けて、到着から帰国まで6日間の歩行距離は1日平均15kmになりました。
 

リエナクトメント

 ショーに参加しているグループを誌面では「ヒストリカル・グループ」と紹介しましたが、ほかに「リエナクトメント・グループ」とも言います。リエナクトメント(reenactment)とは「再演」を意味し、歴史上の闘いなど再現することを「ヒストリカル・リエナクメント(Historical reenactment)」と言い、アメリカの独立戦争や南北戦争、ヨーロッパにおいては中世やナポレオン時代の闘いを再現するイベントが有名です。日本各地で開催される「時代祭」や「合戦祭」もこのカテゴリーに入るでしょう。これらリエナクトメントに参加する人たちを「リエナクタ―(reenactor)」と呼びます。
 第一次大戦や第二次大戦のリエナクトメントはアメリカのミリタリー・コレクターを中心に1970年代後半から始まったとされています。80年代末から90年代に入ると、第二次大戦50周年を記念するイベントと共に多くのリエナクメントが欧米各地で開催されるようになりました。現在、欧米の各種ミリタリー・イベントではリエナクトメントとのコラボは欠かせないものになっています。
 

リビング・ヒストリー

 ミリタリー・イベントにおけるリエナクトメントはこれまで、主に戦闘を再現したアトラクション的な内容でしたが、近年は戦場における将兵の生活を再現したリビング・ヒストリーも盛んです。「ウォー&ピース・ショー」においてもグループごとにテーマを決めて、毎年さまざまな展示が行われています。
 展示を行うリエナクタ―たちの多くは、コスプレをするだけではなく、見学者から質問があれば、展示品の解説、時代背景なども説明してくれるので、一般参加者がミリタリーや戦史に対して理解を深めることや、子供への歴史教育の一環にもなっているようです。

(文=毛 沢山)

M1 155mm榴弾砲。ベトナム戦争中の砲兵陣地をマネキンも使って再現した展示。

グラスファイバー製スピットファイア戦闘機。モックアップであっても、実物大で迫力満点。

ZIS-5またはオートカー・モデルCAトラックで移動するソ連軍リエナクタ―。アコーデオンとバラライカの演奏に合わせて歌いながら走り過ぎて行った。

ドイツ軍宣伝中隊のカメラマンを演じるリエナクタ―。首から下げるライカには別々のレンズが付けられており、カメラの説明もしてくれた。

Mk.Ⅰ 150cmサーチ・ライト。バトル・オブ・ブリテンでも使用されたイギリス軍サーチ・ライトの夜間実演。電源は75ボルト、150アンペア。有効照射距離は約8900m 。

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