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制作こぼれ話

新春レーション試食会(歴史群像123号)

 編集の仕事をしていると、あわただしい作業中に「ぽっ」と忙しさが途切れる空白の時間が生じることがあります。たいてい、夜明けの近い時間帯であり、疲労より空腹を感じることが多く、そのような時には買い置きしておいたカップ麺やパンを食べるか、気分転換を兼ねてコンビニへ買い物に行きます。本誌123号の締め切りも押し迫った師走の夜半、この空白の時間が訪れ、何を食べようかなと思案していたところ、編集部に持ち込んでいたレーションを思い出しました。
 「ミリ飯」として一般に知られるようになった軍用のレーション(携帯糧食)。私は仕事柄、取材先でいただいたり、国内外のミリタリー・イベントで購入しています。入手したレーションは時々キャンプの際に食べるくらいで、普段は食す機会もないため気が付くと賞味期限は過ぎており、資料ボックスの肥やしとなってしまうことが多いのですが、このレーションを雑誌の企画のネタとして使えないかと考えて、数種類を編集部に保管していました。そして、一部を編集部の仲間と夜食として食べたのをきっかけに、年明け初仕事はレーションの試食会となったのでした。
 今回は、アメリカ軍「MRE(Meal Ready to Eat individual)」、フランス軍「RCIR(RATION DE COMBAT INDIVIDUELLE RECHAUFFABLE)」、韓国軍「戦闘糧食1型」と「戦闘糧食2型」、中国「人道支援食糧」を用意しました。中国の物を除き、現在、1食または1日分として将兵に支給されているものです。いずれのレーションも普段の食事に近いものを戦場で兵士たちに供するために開発されていますが、用意されているメニューを見ると、その国の特色が出ており、食文化の一端がレーションを通して分かります。
 それでは、各レーションの内容と感想の詳細を写真でレポートしていきましょう。

(左)アメリカ軍が使用するMREは1981年に導入されました。以来、保存性だけでなく、味の向上やメニューの種類を増やすなどの改良がなされ、進化を続けています。
(右)パックには、主食パック、クラッカー類、デザート、粉末飲料、スナック、アクセサリー・パック、ヒーターなどが1食分として納められています。メニューは導入当時の12種類から現在は24種類に増えています。
 

(左)菜食主義者用のメニュー14「スパイシー・ペンネ・パスタ・ベジタリアン」。副食はクラッカーとピーナツ・バター、パウンドケーキ、干し葡萄。菜食主義者用メニューは1998年から登場します。主食のペンネはトマトソースと和えており、辛味を感じない程度に香辛料が効いたスパイシーな味でした。MREのメニューでトマトソースをベースにした料理は、独特の香りと苦みがあるため、食べる人によって味の評価が分かれるところです。
(右)メニュー8「ミートボール・イン・マリナラ・ソース(トマトソース)」。副食はスナックパン、チーズスプレッド、パウンドケーキ、アーモンド。トレイの左上はアクセサリー・パックの中身で、粉末コーヒー、ミルク、塩、砂糖、マッチ、チューイングガム、ティッシュなどがセットされています。ミートボールは少し甘い味付けのソースで煮込まれております。肉とソースの風味とMRE独特の香りが混じり、ペンネより味の評価は低くなりました。
 

(左)各国レーションの中でも美味しいといわれるフランス軍の「RCIR」。パッケージには内容がフランス語と英語で表記されています。メニューは14種類あり、試食したのはメニュー5。この1箱が1日分の糧食です。
(右)中身は、主食の缶詰2個、パテ類の缶詰、デザート缶詰、ビスケット、粉末飲料、粉末スープ、携帯コンロ、固形燃料、チョコレートなどです。これを戦場では、状況に合わせて朝昼晩に分けて食べることになります。

(左)缶詰はプルトップ式で、缶切りは不要です。主食はビーフ・ラザニア(写真上側)、オリエンタル・サラダ(写真下側)になります。ラザニアのパスタは缶詰のため腰がない状態ですが、パスタの下にあるミートソースと和えて食べると缶詰とは思えない味です。オリエンタル・サラダは、七面鳥の肉、レンズ豆、インゲン豆、ヒヨコ豆、干し葡萄などを煮込んだものです。香辛料のクミンを使用しているのか、カレー風味の味付けでした。
(右)サーモン・パテとビスケット。ビスケットはチョコ味(写真左側)と塩味(写真右側)の2種類が各9枚入っており、異なる風味を楽しめます。サーモン・パテは鮭の身をペースト状にしたもので、ビスケットに塗って食べるとちょうど良い塩味になりました。

(左)韓国軍の「戦闘糧食1型」(写真左側)と「戦闘糧食2型」(写真右側)。ちなみに1型は主食と副食のレトルトパックがセットになった内容で、2型は米を炊いて乾燥させたアルファ米のビビンパです。この2型を夜食で食べたことが、今回の試食レポートのきっかけとなりました。
(右)「戦闘糧食1型」メニュー2。メニューは4種類あって、主食のライスパックと副食のパック4種類、チョコボール、ヒーター、紙皿、スプーンがセットされています。

(左)銀色のアルミパックがレーションを温めるヒーターです。紐を引くと加熱剤が発熱し、レトルトパックを温められます。
(右)副食はチョコボール、牛肉と豆の煮込み、キムチ炒め、アーモンドケーキ、味付けソーセージです。このレーションは残念ながら賞味期限が切れており、試食はできませんでした。

(左)中国の「人道支援食糧」。東日本大震災の際にも被災地に送られたレーションです。手前が「ゆであずき」、奥は「さつまいもかゆ」のパックになります。
(右)「さつまいもかゆ」を試食してみました。さつまいも入りの中華粥で、米はアルファ米を戻したような食感、さっぱりとした甘さの味付けになっています。災害時には「まずは、炭水化物で糖分補給を」ということでしょうか。

(左)本誌連載中の「戦士の食卓」記事にも何度か登場したアメリカ軍の粉末卵を入手しました。左は1945年9月製造(!)の容量3ポンド(約1.3kg)缶。右のビニールパック(500g)は現在使われている集団レーション(URG)用です。機会があれば、調理の様子と調理例を紹介したいですね(もちろん現用のものを)。

(文=ケミカル・ジミー)