歴史群像バックナンバー

名曲を生み出した戦争映画

「平成」から「令和」への改元を迎えたが、6月号の特集では、かつて慶応から明治への改元の頃に展開した「箱館戦争」と、「蝦夷政権」の実像や可能性について、坂本犬之介氏が検証されているので、ぜひお読みいただきたい。
 さて今回のような長期連休の際には未見の映画をまとめ観するのが楽しみだが、最近では廉価版のDVD、特にコスミック出版さんの10枚組で2,000円しない商品群が充実している。基本的にはパブリックドメインの作品が主体なので、戦前・戦中、戦後間もない時期の映画が多いが、国内未公開、ソフト未発売のものも目立つ。歴史に関するジャンルでも古代史劇や海賊もの、剣劇アクションと多彩だが、何といっても戦争映画が大変多く『パーフェクトコレクション』の名で何セットも販売されている。ただし前述のように制作年代が古いためモノクロ作品が大半で、国威発揚をはじめ制作当時の時代感覚を反映している部分や、画質にばらつきが出てくるのは致し方ないところだろう。
 記憶に残る作品では例えば、サイレントながら実機による迫力の空中撮影に大量の地上部隊も登場する一次大戦の航空戦もの『つばさ』(1927)。二次大戦での連合軍輸送船団とUボートの戦いをミニチュア特撮も駆使して描く『北大西洋』(1943)、B-29「エノラ・ゲイ」のティベッツ機長の夫婦愛を軸に、広島原爆投下への道を(もちろんアメリカの立場から肯定的に)描く『決戦攻撃命令』(1952)をはじめ枚挙にいとまがない……。
 しかし今回特に触れたいのは、作品としては有名ではないが、秀逸な音楽が現在にも生き続ける2作品。まずポーランド戦からバトル・オブ・ブリテンにかけてを背景に、戦闘機パイロットになったポーランド人ピアニストとアメリカの女性記者との恋を描く『戦雲に散る曲』(1941)。ラフマニノフのピアノ協奏曲を思わせるような、美しいテーマ曲「ワルソー・コンチェルト」は、多くのピアニストにカバーされ、準クラシック的装いで演奏されることがある。もう一つは『シェーン』のアラン・ラッド主演による『別働隊』(1950)。ナチス占領下の北イタリアに潜入し、パルチザンと共に工作活動をしていた米軍大尉が、味方の裏切りで負傷するも辛くも脱出する。戦後大尉は現地へと戻り、内通者を探り出すという話。本作の中で、ドイツ兵の接近を仲間に知らせるためにギターをつま弾いて歌う警告の曲が、英語歌詞を付けられ、名歌手ナット・キング・コールにより『モナリザ』のタイトルで歌われて、世界的なヒット曲となった。2つの名曲の原点となった戦争映画を観たいと思って探していたが、両作品ともに収録されている『地獄の最前線』というタイトルの10枚組セットに行き当たり、満足したという次第。

 (by 吾助/歴史群像155号)

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