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歴史群像バックナンバー

もし第二次世界大戦がなかったら

 ロンドン・オリンピックは日本との時差が8時間あるため、夜中から早朝にかけての生中継で寝不足になった人たちも多かったことだろう。
 オリンピック中継の歴史は古く、1932年のロサンゼルス大会でラジオによる初の実況中継が予定されたが、オリンピック実行委員会と放送局の条件が折り合わず、アナウンサーが競技の模様をメモしたものをスタジオに戻ってから読み上げるという変則的な形となった。正式な実況中継は次のベルリン大会(1936年)からで、短波放送が受信可能な世界全域に配信され、同時にベルリン市内に設けられた受像器に限定ながらテレビによる初の定時実験放送も行われた。
 テレビの開発は19世紀末には基礎研究が始まっており、1925年から26年にかけてアメリカ・イギリス・日本で映像の送受信に成功している。1929年にはイギリスのBBCが実験放送を行い、1936年には本放送を開始した。日本でもベルリン・オリンピックに続いて1940年に開催される予定だった東京大会に向けて、日本放送協会がテレビ中継の準備を進めていた。しかし、東京大会は日中戦争の激化に伴い中止となる。それでも日本放送協会は1939年(昭和14)にテレビの公開実験を行い、翌年4月から太平洋戦争勃発の年となった1941年6月まで数本のテレビドラマによる試験放送を行った。そしてアメリカでは同年3月にテレビの本放送が始まっている。太平洋戦争直前はテレビ放送の黎明期だったのである。
 しかし、戦争の勃発により各国ともテレビ技術はレーダーなど軍事に転用された。ようやく日本でテレビ放送が始まったのは1953年(昭和28)2月である。この間、10年以上の空白期間があったことになる。もし戦争がなければ1941年頃には日本でもテレビ放送が始まっていただろう。
 近年、娯楽の多様化によりテレビ離れが進んでいるといわれるが、黎明期の空白がなかったら2012年現在のテレビ放送はどのような形になっていたのだろうか。

(by 橋本兵曹長/歴史群像115号)