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歴史群像バックナンバー

玉音盤の戦後エピソード

 歴史関係の仕事をしていると、写真や文章など様々な種類の一次資料に接することがある。今回もカラー記事「日本海軍の停戦」に掲載した「大海令」の実物など貴重な資料を実際に見ることができた。
 終戦に関わる資料として有名なのが玉音放送の音源であるが、今年7月9日、宮内庁は玉音放送の原盤音声を公開すると発表した。この「玉音盤」の録音から放送にいたるエピソードは、映画『日本のいちばん長い日』や原作を見てもらうこととして、ここでは、玉音放送後の原盤にまつわるエピソードを紹介しよう。
 現存する「玉音盤」と呼ばれる原盤には2種類(放送テイクとアウトテイク。アウトテイクとは、完全収録されながらも実際には使用されなかったテイク)あり、昭和20年8月15日の放送後、社団法人日本放送協会(現、NHK)から宮内省(現、宮内庁)に渡された。その後1種類が昭和50年(1965)、NHKに貸し出され以来、宮内庁とNHKでそれぞれ保管されてきた。
 現在、NHKが展示・保管するものはアウトテイク盤であるといわれ、東京愛宕山のNHK放送博物館で一般公開されている。しかし、この原盤は宮内庁から渡された時点でレコード盤の劣化により、再生は不可能だった。では、テレビや映画などで使用される玉音放送の音源はというと、原盤をダビングしたコピー盤が音源となっている。
 コピー盤は、宮内省が所有する玉音盤を接収した進駐軍がNHKに依頼して、1946年5月ごろ制作されたという。この時に実際、放送で使われたテイクがダビングされた。作られたコピー盤は3組。このうち2組を進駐軍が持ち帰り、残り1組を制作に関わった技術者が進駐軍から譲りうけたという証言と、技術者が2組の制作依頼に対して1組余分に制作したなど、依頼された時期や経緯に関しては諸説あるようだ。その後、技術者が所有していたコピー盤は昭和37年(異説あり)に存在が明らかとなり、そのコピー盤から磁気テープに起こされた音声が、貴重な音の資料として提供されてきた。
 今回、公開されることになった宮内庁所有の原盤(放送テイク)も当初は、ゆがみやひびなどの劣化によって再生は不可能といわれていた。しかし、レコードの復元と再生に成功し、デジタルリマスターされた音声が戦後70年に当たる今年、よみがえることになったのである。
 なお、玉音盤とともに皇居内の防空壕施設も50年ぶりに宮内庁のホームページなどで、写真と映像で公開されるという。音源がどれだけクリアーに聞こえるのか、70年を経た防空壕はどのような状態になっているのか、公開が楽しみだ。

 (by 毛沢山/歴史群像132号)