編集後記

“戦い”は継続できるのか

現代の歩兵の装備品はどんどん増えていて、場合によっては40キロ以上もの荷物を携行することになるそうです(近年は各種電子機材やそのバッテリーの重量が増えているのだそうで)。これでは戦闘の前に疲れ切っちゃいますから、どうにかして兵士の負担を軽減してやらないとなりません。ひとつの方法は装備品を運んでくれるロボットの導入、もうひとつは歩兵が装着するパワー・アシスト装置の導入が考えられています。これは要するにパワード・スーツ(強化服)ですけど、英語ではパワード・エクソスケルトン(強化外骨格)と呼ぶのだそうです。写真はロッキード・マーティン社のエクソスケルトン“HULC”の試作品です。(photo:US ARMY)

 本誌156号では、齋木伸生さんの「継続戦争」の記事を担当させていただきました。1939年といえばドイツ軍のポーランド侵攻(同年11月に第一次フィン・ソ戦争=冬戦争勃発)、1941年といえばバルバロッサ作戦に始まる独ソ戦(同時期に第二次フィン・ソ戦争=継続戦争勃発)のイメージしかなかった私にとって、フィン・ソ戦争はかなり新鮮でした。
 小国のフィンランドが超大国ソ連を相手に徹底抗戦し、二度の戦争で敗北しながら戦後も独立を保ったという史実は、ある種の痛快さがあります。地理的にも心理的にも遠い国であるフィンランドの戦争について、日本でも関心が高い理由がわかった気がしました。もちろん、これは単純に痛快といえるような話ではなく、戦後のフィンランドはソ連と友好条約を結んで宥和政策をとることと引き換えに、資本主義経済と議会民主制を維持してきたわけで。そのソ連への迎合的従属的姿勢が国際的に非難されたりもしたわけですが……。
 ちなみにフィンランドの救国の英雄・マンネルヘイムは、名前はなんとなく知っていました(芝村裕吏さんの『遥か凍土のカナン』に出てきたっけ? という程度の認識ですけど)が、70歳過ぎて軍を指揮して戦ったのは素直にすごいと思います。ふだんから、もうトシだ、引退だ、などとボヤいている自分が恥ずかしくなります(笑)。いや、自分は死ぬまで戦うつもりでいても、無能な高齢者には“戦場”すらなくなってしまうのが、日本の出版業界なんですが――

 さて、話はガラリと変わって、宣伝です。
 坂本明さんの『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』が、8月30日に刊行となります。歩兵が戦い、勝利するために必要な装備の詳細を豊富なイラスト・写真で解説しています。とにかく内容は盛りだくさんで、歴史群像編集部がほとんど総がかりで(笑)作りあげた本です。
 歩兵の装備なんて戦車や艦艇や航空機に比べると地味に感じますが、新たなテクノロジーが細かく導入されていて、着実に進化していることは非常に興味深く感じます。全国のコンビニエンス・ストアおよび書店で発売されます。値段は650円+税です。ぜひお買い求めください!

 (by 種子島鉄砲之助/歴史群像156号)

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