編集後記

昭和最後の小学生

 編集の仕事をしていると政治史や国際関係史など、それぞれの分野で新しい知見や視点で研究なさっている先生方にいろんなお話を伺うことがあります。とくに最近は小生と同年代(いわゆる団塊ジュニア世代)の先生に取材する機会も増えてまして、インタビューの場では「同世代トーク」となることもあります。
 たとえば歴史に興味を持ったきっかけなんかも、我が歴群編集部の大先輩(少年仮面ライダー隊世代)ならばおそらく「司馬遼太郎」と答えるところでしょうが、我々世代(ファミコン世代)だと『○○の野望 全国版』だったりします。
 戦国大名は全員天下統一を目指していたという拭いがたい歴史観を植え付けた(?)名作ゲームですが、実際に大人気戦国漫画の先生と「どの大名でプレイしました?」なんて話をしてたりしますからね。またその頃はちょうど某公共放送の大型日曜時代劇が絶頂期だった頃でもありますし。歴史好き小学生にはたまらん時代だったわけです。
 また東北出身の先生にインタビューしたとき少々脱線しながらも話をしたのが、我々世代にも「丁目の夕日」や「2世紀少年」のごとく、地域に関係なく共有する原風景があるという点(小生は鎮西出身)。お家でファミコン、お外でチャンバラ、銀玉鉄砲・エアガン、マッチョな消しゴムや天使と悪魔のシール交換に興じたり、ガチガチに護岸されたドブ川でザリガニを釣ったり。
 郊外に行くとまだ水洗便所でないところもあり、おそらく我々が家畜のニオイを「田舎の香水」などと称する最後の世代かも。歴史学では「人間とは国や時代といった支配的・社会的な条件から形成される歴史的現象である」といいますが、明治以来の近代化と世界の一体化の進む現代では地域の差よりも世代による断絶の方が大きいのかもしれません。東国と西国におけるケガレ意識の大きな差異などという「日本」という国の多様性について興味深い話を伺った直後だけに印象的でした。
 よく現代人が戦国時代などにタイムスリップして活躍するマンガや映画があったりしますがどうでしょ。戦国までの侍なんか「生首を見ないと調子が出ない」輩とか、「立小便を笑われただけで相手を切り殺す」輩ですよ。絶対カラミにくいですって。現在の我々からしたら地球の裏側の陽気なブラジリアンの方がよっぽど近しい存在かもしれませんな。

 (by 魁!! 小平太/歴史群像130号)

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