空挺館の落下傘 特別取材レポート(歴史群像157号)
▲二階のバルコニー。かつてはここから皇族が演習場を望んだ。
▲各種装備品のほかに、パレンバン空挺作戦や義烈空挺隊の貴重な資料が展示されている。
▲陸軍騎兵学校時代の将校通信学生が学んだ機材の一部。
本誌8月号、10月号の[迷宮歴史倶楽部]では、旧陸軍の落下傘をとりあげました。当時の落下傘を実際に取材できないだろうかと悩んでいましたら、陸上自衛隊習志野駐屯地内・空挺館にあることが判明、今回特別に取材させていただきました。
現在、習志野駐屯地といえば第1空挺団の所在地として有名ですが、そのルーツは《空の神兵》で知られる陸軍挺進隊で、敷地内にある空挺館には大戦時から戦後~現代にかけての貴重な装備品や史料が展示されています。そしてなにより、空挺館という建物じたいが非常に貴重なのです。
これは陸軍騎兵学校が目黒にあったころ、天皇および皇族が馬術等を観覧するための御馬見所(ごばけんじょ)として1911(明治44)年に建てられた建物で、騎兵学校の習志野移転に伴い1916(大正5)年に移築されたのだそうです。
戦後の一時期は進駐軍の宿舎としても使用されましたが、その後に「空挺館」として運用されることになりました。重厚かつ典雅な内部はそのまま残され、厳かな雰囲気のなか、日本の騎兵と空挺の歴史を感じられる空間となっています(一般開放日は年数回に限られています。日時は第1空挺団ホームページでご確認ください)
さて、今回の空挺館取材ですが、旧陸軍の落下傘が見られるだけでもラッキーと思っていたところ、なんと第1空挺団広報室・広報陸曹で空挺館館長の横田浩映さんのご好意により、貴重な一式落下傘を赤絨毯の長い廊下に広げて見せていただけたのです! おそらく戦時中から変わらぬ輝きを放つ白い絹の傘部、また傘囊の色鮮やかなことなど、モリナガさんと二人、驚きの声をあげっぱなしでした。
さらに作画参考のためにと装備品装着もさせていただき感無量……。これまで空挺降下は富士総合火力演習などで遠くに眺めて、ああ綺麗だななどと思っていましたが、隊員の勇気、技量の凄さが肌から伝わるような体験でした。
▲三笠宮殿下は将校通信学生として履修し、御馬見所に宿泊された。
(文/吉祥寺怪人)