制作こぼれ話

「タバコカード」の世界(歴史群像117号)

戦前を中心に流行したタバコカードのおまけ

 今号の記事と付録で、ドイツ軍テーマのものをご紹介した「タバコカード」。現代で言うところの「トレーディングカード」の走りともいえるものだが、ゲーム的な機能はなく、あくまで鑑賞ならびにコレクション専用のものである。わが国ではあまり語られることがないが、欧米では今でもアンティーク的な人気が高く、蒐集の対象となっている。個別のカードとしてはもとより、専用アルバムに貼られたものも取り引きされており、そのテーマの全枚数が揃ったコンプリートのアルバムにはそれなりの値が付いているそうである。
 記事ではご紹介しきれなかったが、テーマは驚くほど多様で「世界の生産物」「映画の名シーン」「国旗」「紋章」「スコットランドのタータンチェック」「歴史的風景」「クラシックカー」「ツェッペリン飛行船世界一周飛行」などもある。軍事関係では「軍帽の歴史」や、面白いものでは「空襲下の対処法」とでもいうか、毒ガス爆弾の処理法、ガスマスクの装着法などを描いた戦時国民向けの啓蒙的なものも存在する。なお「タバコカード」は、欧米だけでなく日本(花札とトランプ、広重の東海道五十三次、大名、元勲、日清戦争、銃後の生活ほか)や中国でも発行されていた。
 戦争史に関する軍事洋書などを読まれる方なら、写真や絵画が残っていない歴史的会戦や有名軍人の紹介用に、こうしたカードが時おり使われているのをご覧になっているかもしれない。 

(文=吾助)

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