制作こぼれ話

今日も城へタイムスリップin新府城 (歴史群像135号)

(1)衝撃の新府城

 はじめまして。城郭研究家の西股総生先生のもとで勉強兼ライター修行をさせて頂いている、城マニアの いなもとかおり と申します。2月号の『戦国の城』は新府城。西股先生と編集部の現地取材に同行させていただいたご縁で、「制作こぼれ話」を書かせていただきます。

↑ 「やった? 城だ、城だ、城だー!!」

 新府城について、西股先生からは「あまり予習して来ないでね」という助言をいただいてからの“城攻め”でした。先生が言うからには予習はしてはいけません(笑)。新府城には何やら秘密があるようです。

 新府城は台地の上に築かれた丘城。北側には2つの出構(でがまえ)、南側には丸馬出、西側は天然の断崖絶壁が立ちはだかります。残る遺構は美しく、土塁は高さもある。既に訪れたことのある皆様も、きっと気分を高揚させながら登城したのでしょうね。

↑ 城との会話はいつも一方通行

 特に、「東出構」と「西出構」は、他の城にあまりない特徴ですので興味津々!

 「君は一体何なのだ?」

 と問いかけながら、近くを歩いたり、遠くから眺めてみたり、登ってみたりします。質問攻めにされる西股先生は、いつもの通り「なんでしょうね?」とニコニコ笑っていらっしゃいました。無数に設けられた横矢掛り、曲輪の謎、虎口の土塁の特徴など、専門家が側にいて教えて下さる環境は、まさに贅沢の極みです。

 全ての曲輪・遺構を確認し終わった後、西股先生は衝撃の一言を放ちました。
 
 「結論、新府城は○○じゃない」

 驚きの言葉に唖然。口、目、毛穴に至るまで全ての穴が開いていたかもしれません。妄想の中で繰り広げられた籠城兵との戦で脳内が忙しかったためか、一体どんな城なのか? 全く読み取れておりませんでした。なんだか新府城に負けた気分…。先生は驚く反応が見たかったから、私に「予習して来ないでね」と言ったようですね。…なんて悪い人(笑)。

 先生の結論が気になる方は、1月号に掲載された新府城の記事を読んで下さいね。

↑ 【看板】「馬出し」に馬を出していた!

↑ 軍議中でしょうか?

(2)能見長塁まで足を伸ばして

 撮影後、西股先生から衝撃的な言葉を聞き、それを確認するため「能見長塁(のうけんちょうるい)」にも寄って頂きました。
 
 能見長塁は、新府城から北へ車で5~10分ほど走ると遭遇します。武田勝頼が入城からたった2、3か月程しか居ることができなかった新府城。武田氏滅亡後は徳川家康の手に渡りますが、「新府城は○○じゃない」ので、北条氏との戦いのために長塁を築いたのではないかと考えられています。

↑ 民家にひっそりと残る土塁(有り難う!)

 能見城を通して釜無川に向い東西全長約2キロメートル続く能見長塁。新府城が築かれた台地をバツっと切っているのです。遺構のほとんどは失われてしまっていますが、一部が民家の中にひっそりと残っているので新府城にお立ち寄りの際は是非一緒に訪れてみてください。

 ちなみに、御名方(みなかた)神社の裏に残る能見長塁の遺構では、二重の空堀を確認することができます。編集部の方が空堀に立って下さっていますが、青と赤の洋服は目立ちますね。写真でも規模や高さが伝わってきます。ん?、この「高低差」がたまらなく大好き!!

↑ 御名方神社裏に残る二重の空堀(有り難う!)

↑ 御名方神社

 天正壬午の乱の折、北条軍5万5千に対し徳川軍は1万。家康は圧倒的な兵力の差をどのように埋めようとしたのか? そして、新府城と、新府城が築かれた台地をどのように利用したのか? 理解するためには、実際に歩いて確認することが大切だと実感する楽しい取材でした。

「私も新府城を解説して欲しい!」という方に吉報です!
西股先生と一緒に新府城を歩くツアーが2月に行われます。奇しくも勝頼が新府城を焼いた日(3月3日)と同じ冬の季節です。企画者一同張り切っておりますので、是非いらしてください。お城でお会いしましょう!
◆2016年2月20日(土)「西股総生&いなもとかおりと歩く新府城ツアー」
 詳細・申込みは「シロキチ企画(http://s.ameblo.jp/shirokichi8)」で検索!

文・写真=いなもとかおり(ライター)

國學院大學文学部史学科古代史専攻卒業。19歳の時に、会津若松城に一目惚れしてから城の虜となる。訪城数は200ほど。日本城郭検定準1級、国内旅行業務取扱管理者、温泉ソムリエの資格を持つ新人フリーライター。テレビ・ラジオにも多数出演。フジ『おっかけのおっかけ』、BS日テレ『中川翔子のマニア☆まにある』など。
【ブログ】http://s.ameblo.jp/a-k1122
【Twitter】@tyome_no_heya

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