制作こぼれ話

簑輪みのわりょうさんの連載コラム『日本100名城と武将たち』がスタート!
(歴史群像148号)

くせものの譜

『最低の軍師』(祥伝社文庫)

歴史小説の気鋭・簑輪諒さんが再び登場!

 2018年2月号より、簑輪諒さんの新連載『日本100名城と武将たち』がスタートしました。NHKで『真田丸』が放送されていた2016年に、『大河ドラマでは絶対に描かれない!「大坂の陣」マイナー武将』を短期集中連載していただいて以来の登場です。
 簑輪諒さんは、2014年に歴史群像大賞入賞作品『うつろ屋軍師』でデビューした歴史作家。1987年生まれと、歴史作家としては異例の若さ(おそらく最年少)でありながら、デビュー作から「歴史時代作家クラブ」の新人賞にノミネートされ、その後も評価の高い作品を次々と発表している気鋭の若手です。
 その独自の着眼点、魅力的な人物造形、そして緻密な構成で、普遍的でありながらスピード感のある物語を作りあげて、着実にファンを増やしています。
 簑輪作品の大きな魅力として、前回、そして今回の連載コラムにも通じますが、、一般にはあまり知られていないマイナーな武将たちの、その知られざる魅力や業績にスポットを当てていることが挙げられるでしょう。

知られざる武将たちの物語

 デビュー作の『うつろ屋軍師』は、信長の五大老の中でも地味な存在である丹羽長秀ですらなく、その軍師でほぼ無名の江口正吉が主人公。長秀の死後123万石から4万石まで大減封されてしまった丹羽家の若き主・長重を支え、改易を乗り越えて戦国最大の御家再興に挑む物語です。時代の荒波に幾度となく翻弄されながらも、理想と空論(うつろ)で難局を乗り越えていく若き主従の姿は、あの丹羽家にこんな物語が埋もれていたとは……と、驚きと感動をもって迎えられました。
 続く『殿さま狸』は、秀吉の出世を支えた蜂須賀小六ではなく、その息子・家政が主人公。父・小六という高すぎる壁を前に悶々とするひねくれ者の2代目が、阿波の初代藩主としての己の道をまっとうせんとする姿を描いた成長物語です。豊臣恩顧の大名の多くが徳川政権下で改易されていく中で、明治まで蜂須賀家を残す礎を築いた男が、絶体絶命の関ヶ原でどのような決断をしたのか? 阿波踊りを始めた殿様との逸話もある男の生き残り戦略が痛快に描かれています。
 第3作『くせものの譜』は、大坂の陣で家康が「天下二番首」とした御宿勘兵衛の人生を縦軸に、彼と関わった世間的には「敗者」と呼ばれた男たちを横軸に紡いだ連作短編集。
 当時、大坂の陣一番首の真田信繁よりも遙かに武名が轟いていた御宿勘兵衛の、「厄神」と忌み嫌われた負け続きの戦人生は、読後になんとも不思議な爽快感が残る物語となっています。「敗者と呼ばれた男達の人生の意味」を問い、日経新聞書評でも満点★5つという高い評価を受けました。 
 その他、『でれすけ』は、500年の歴史をもつ名門・佐竹家の秀吉政権下での生き残りを描いた、これまで一番ともいえる王道の物語と思いきや、息子・義宣に実権を譲り渡して隠居した義重を主人公に、老いや世代交代を描くという変化球。
 現在発売中の書き下ろし最新刊『最低の軍師』は、下総国臼井城に押し寄せる上杉謙信軍1万5000をわずか2000の城兵と北条の援軍250で撃退したという、軍師・白井浄三の活躍をエンターテインメント性も豊かに描いた作品。白井浄三は、この戦いにのみ名前が残る幻の軍師。何故「最低」なのかは、ぜひ読んで確かめてみてください。こちらは第7回の歴史時代作家クラブ作品賞にノミネートされています。
 この他、アンソロジーとしては、『決戦!関ヶ原2』、『決戦!賤ヶ岳』、『戦国番狂わせ七番勝負』などがあります。

今度のテーマは「100名城」

 そんな簑輪さんの今回のコラムのテーマは「100名城×武将たち」で、イラストは、歴史マンガ・イラストで有名な大久保ヤマトさん。
『うつろ屋軍師』では白河小峰城を改修した城オタクな若殿・丹羽長重を、『殿さま狸』では山間から海に近い平地の徳島城に拠点を移す決断を下した蜂須賀家政を、城に対する情熱たっぷりに描いてきた簑輪さんに相応しく、日本100名城と続日本100名城に関連する城主や城代などから、選りすぐりのエピソードを取り上げてもらいます。
 第1回は「大垣城×伊藤盛正」、第2回は「岡城×志賀親次」、そして次回の第3回は「龍岡城×松平乗謨」という初の幕末を予定しています。
 日本100名城と続日本100名城を合わせて計200城。年6回の連載で、果たしてどこまでできるのか、壮大なチャレンジが始まりました。どうぞ、ご期待ください。

簑輪諒さんtwitter
https://twitter.com/genkyo_kyogen
大久保ヤマトさんtwitter
https://twitter.com/mousou_roku

(文/カトリーヌ)

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