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「城下町探訪」 伊賀上野―築城の名手・藤堂高虎の城をいただく“忍の里”

Ⅱ 町の見どころ

建築博物館のような町   伊賀流忍者の里

※「Information」マークのついてる写真はクリックすると、詳細情報がご覧になれます。

シックな風情漂う、まるで建築博物館のような町

近世の城下町の町割りを留める伊賀上野の市街地には、武家屋敷や伝統的な町屋など風情ある建物が点在している。職人や商人の居住区だった鍛冶町、魚町、紺屋町、侍が住んだ忍町、鉄砲町といった往時の町名もそのまま残る。半日ほどかけてじっくり散策するのがおすすめ。なお、有料公開施設となっている入交家住宅以外は、普通に人が生活している場所なので、あくまでもマナーとエチケットを守り、お住まいの方に迷惑をかけることがないように。

①武家屋敷が建ち並んでいた玄蕃町。

②玄蕃には珍しい侍長屋屋敷門も残る。

③赤坂町の濱邊邸。復活させた約160年前の店行灯が建物の趣にマッチ。

④(上)農人町の旧伊賀街道と旧大和街道の追分けに建つ井本薬局。
⑤(右)車坂町、旧伊賀街道沿いに建つ大正時代築の滝本酒造場。中二階の虫籠窓(むしこまど)が歴史を感じさせる。

⑥七寺院(上行寺、妙典寺、妙昌寺、善福寺、萬福寺、大超寺、念佛寺)が並ぶ寺町通り。真っ直ぐに続く白壁が美しい。

⑦相生町の入交家住宅。寛政(1789~1800年)の頃に、入交勘平が拝領した武家屋敷が保存修復工事を施され、公開されている。長屋門、正面に設えられた式台玄関(上役が訪問時に使用した)など、武家屋敷の特徴が見られる。

⑩西町の筒居邸。虫籠窓、出格子、駒寄など歴史を感じさせる設えがよく保たれている。

⑧(左)鍛冶町の田中邸。広い開口部を確保するための改修で、町の趣と調和するように縦格子の引き戸にする工夫が見られる。
⑨(右)中町の本町通りに建つ菓子店の湖月堂(手前)と筒井邸(一軒奥)。

⑪徳居町の上田邸。重厚な土塀、中央の腕木門が往時の武家屋敷を彷彿とさせる。

⑫忍町の赤井邸。犬矢来(いぬやらい)を立てかけた長屋門が残る武家屋敷。

⑬(上)愛宕町の服部邸。出格子の窓、白漆喰で塗り込められた虫籠窓。町並みの風情を考慮した、こうした伝統的な町屋の造りを保つ修復がなされた家屋に、居住者のこの町に対する愛着と誇りが感じられる。
⑭(右)かつて鉄砲足軽の住まいが配されていた鉄砲町からは正面に天守が望める。

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伊賀流忍者の里

 大和国と接する伊賀国は、古代より東大寺を中心とする南都の有力寺院の荘園が多く、中世に入ってからも、有力な守護や地頭に支配されることがなく、また他地域のように強大な武家が勢力を伸長することもなかった。このため、多数の土豪や地侍の群雄割拠状態にあった。その頃彼らは、敵から自らを守るため独自の諜報術やゲリラ的な武闘術を編み出し、それが伊賀流忍術、忍者の始まりと考えられる。そして伊賀国には千賀地(旧姓・服部)宗家、百地家、藤林家の上忍三家を中心とした、伊賀惣国一揆と呼ばれる自治共同体が形成されていった。ところが戦国時代になると、そんな伊賀惣国一揆も時代の波に洗われていく。元々耕作地が狭いうえに忍家の組織の肥大化により財政的に逼迫したことで、宗家の保長が室町幕府十二代将軍・足利義晴に出仕し伊賀を離れた(なお、この保長が初代服部半蔵で、後に徳川家康の祖父・松平清康に仕え、その家督を継いだ次男・正成が家康の神君伊賀越えで功をなし、徳川家の隠密頭まで務めた二代目服部半蔵である)。そして伊賀惣国一揆を壊滅に追いやったのが、織田信長による二度にわたる伊賀攻め(天正伊賀の乱)であった。
 やがて時代が徳川の世へと移ると、生き延びた伊賀者は、神君伊賀越えの功績から伊賀組同心として幕府に召し抱えられることとなる。ちなみに、家康の命で伊賀に入った藤堂高虎は、伊賀に残った忍家・忍者の勢力を巧みに温存する政策をとっている。その一つが無足人制度(農兵)といわれるもので、彼らは俸禄を受けないが、帯刀が許される無足人として武士と農民の間に位置づけた。そしてもう一つが、伊賀国の執政を司る城代家老に、初代服部半蔵・保長の孫と伝えられる保田采女(改姓後は藤堂采女)を起用したことである。築城技術ばかりが賞賛される高虎であるが、政治家としても超一流だったのである。 

●伊賀流忍者博物館

忍者屋敷、忍術体験館、忍者伝承館の3施設からなる伊賀流忍者の殿堂。忍術の資料の充実ぶりは世界でも屈指。謎に包まれた伊賀流忍者の世界を垣間見ることができる。館内の忍術体験広場では、現代に生きる忍者(?)が忍術を実演する忍術ショーも開催されており、老若男女を問わず人気のスポット。


(左)忍者屋敷は市内高山地区に実際にあった下忍の家を移築・復元したもの。(写真提供:社団法人 伊賀上野観光協会)

(上)忍者屋敷内には外敵の侵入から身を守るための様々なカラクリが仕掛けられており、それをくノ一(女忍者)に扮した説明員が実演して見せてくれる。(写真提供:社団法人 伊賀上野観光協会)

(右)手裏剣打ちや真剣を使った忍者ショーは迫力満点。演目は日替わりとなっている。(写真提供:社団法人 伊賀上野観光協会)

忍術体験館、忍者伝承館には、忍者が使った忍具や、忍者の生活をリアルに再現したジオラマ、忍術の古文書が展示されている。(写真提供:社団法人 伊賀上野観光協会)


マップ&伊賀上野城データ    Ⅰ 城郭の見どころ    Ⅲ 町角情報    Ⅳ Another