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機動戦士ガンダム 一年戦争全史 U.C.0079-0080〈上〉〈下〉 模型作品解説

1/400ムサイのディテールアップ

製作・文/柿沼秀樹   使用キット/バンダイ ガンダムコレクション 1/400ムサイ

『サンダーバード』『スター・ウォーズ』など、1960~80年代の特撮プロップ研究でも知られる柿沼秀樹氏がムサイの大型キットを実写SF映画テイストで徹底ディテールアップすることに。だが、そこには予想しなかった苦行が待ち構えていた!
本来はお勧めできない工作、其の1「ムサイ」
 最初は、『一年戦争全史〈上〉』のためにムサイの解説イラストを描く……というだけのつもりだったのだが、どうせなら1/400の大型キットをディテールアップしてみようということにしたのが間違いの始まりだった……。
 この1/400ムサイは“1/400スケールモデルキット”となっているが、材質がABS樹脂で、1/400のモビルスーツ・フィギュアを展示する“スタンド”としても機能するため、ディテールアップ改造してディスプレイモデル化するには、どちらかというと不向きなアイテムだ。ABSは通常のプラモデルの材質であるスチロール樹脂と比べて傷つきにくく衝撃に強いという特性を有するため、スジ彫りしたり加工するのには大変苦労する。ABSの表面は堅く、スチロールのようには容易にスジ彫りできない上、接着もABS専用接着剤か軟質樹脂でも接着できる瞬間接着剤を使用するしかない。仕事でなかったら途中でほうり出したかもしれない難作業となった。
ディテールアップ
 本の性質に合わせて、ムサイも“実在したならどんなディテールなのだろうか?”というコンセプトでディテールアップしていく。宇宙を航行し、モビルスーツのキャリアでもある全長200メートルを越える宇宙巡洋艦、という設定から想像を膨らませていく。ビームや実弾の被弾も考慮しているだろうから装甲も施されているだろうし、直視ウィンドウには装甲シャッターだって装備されているだろう。艦橋付近には特にクルーの生残性向上のため三重の装甲を装備し……などなど勝手にディテールを考えていくことから開始する。凹凸を増す程度の安直なディテールアップではキットがでかいのでとても間が持たない。
 ムサイの耐用年数がどれほどかわからないが、戦役ごとに小改装が行なわれ、そのたびに追加装備が施されていると仮定し、本来なら装甲の内側に内蔵されているはずの動力パイプ、ループ類の一部が剥き出しになっている、と考えてそれらを追加していく、というのが今回のディテールアップの原則だ。開戦後、エンジンには消火システムが追加され、排気筒にも船内の有害物質を排出する細いパイプ類が追加され、艦橋が被弾した場合の副指令所、および副々指令所も増設された……などなど、自分が1/400になったつもりでいろいろと考える。
 流用パーツは手持ちのジャンク箱にあったものだけでは足らず、ドラゴンやトランペッター、ハセガワ、フジミなどの比較的部品の細かい1/72AFVを10箱ほど買い足して使用した。主砲塔は光学測距儀などを追加したところ旋回できなくなってしまった。
船体
 船体全体には同じサイズの追加装甲が無数に貼られているという設定にして、試しに10枚ほど細切りプラ板を船底に貼ってみたところ、木製帆船のようになってしまったので、装甲板は急きょモールド(スジ彫り)で再現することにした。船体全体のモールドを削り落とし、全体にスジ彫りを施す。スジ彫りおよびティテーリングは本当はこの2倍ほど欲しかったが、モールドの削り落としなどにずいぶんと手間を要したため、時間切れとなってしまった。
塗装
 カラーリングはなるべくオリジナルのイメージに近く、と考えたが、もっと緑を押さえグレーに近い方が“リアル”だったかもしれない。RLMグレーあたりが発色がシブくて良かったかもしれない。パネルごとに明るいグリーン、暗いグリーンで塗りわけた。実際ならば艦名や式番、国章が(有視界戦だけに)ことさら強調されて描かれていると考えたがオリジナルのイメージを壊すと思い踏みとどまった。撮影終了後、回収してマーキングやダメージングを追加したい。