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機動戦士ガンダム 一年戦争全史 U.C.0079-0080〈上〉〈下〉 模型作品解説

高機動型ザクによる“ジェット・ストリーム・アタック”

製作・文/髙木亮介   使用キット/バンダイ マスターグレード MS-06RザクⅡ(黒い三連星)

ドムに乗る前の「黒い三連星」が、高機動型ザクで対艦攻撃を行なう模様を再現すべく、プロ原型師/造形家の髙木亮介氏が独自のコンセプトでマスターグレードMS-06Rとマゼランの大型モデルを製作。しかし正直、マゼランがこんなに大きくなるとは思ってませんでしたよ!
高機動型ザクの製作
 ドムでおなじみの「黒い三連星」ですが、ここでは高機動型ザクに乗ってもらいます。作例ではMS-06Rのキットを2つ使用して2体分+差し替え用のパーツいくつかを製作し、撮影時に適宜パーツを組み替えて、合成で3体に見せることとしました。
 今回は、作例全体について〈モビルスーツは戦車(装甲兵器)である〉という命題が編集部から出されていたので、装甲にはクレーンで吊るためのフックを取り付け、メインテナンス・ハッチのモールドを埋め、比較的重厚に見えるようにしています。
 さらに工夫してみた点としては、バーニアが増設されている高機動型ザクの特徴を強調するため、脚のプロペラント・タンクを大型化したことが挙げられます。斜め下方に飛び出したタンク本体は旋盤加工でそれらしく自作したパーツを使用しています。
 また、火器類も加工してみました。1体はマシンガンを両手に持たせることにして、左手用マシンガンを製作、そして右手用にスナイパーライフル風ロングバレル仕様のマシンガンを製作しました。マシンガンのスペアマガジンは、もともと腰部背面にを取り付けるようになっているのですが、ノズルの下に弾薬類があるのはさすがに怖いので、これは腰側面に移動させて、その代わりヒート・ホークを腰部背面に装着するようにしました。バズーカ砲は中央で折り畳む方式にして、1体の背部エンジン部の外装を部分的に切り取ってメカを剥き出しにして、そこにフックをつけて背負わせました。
 塗装仕上げの際に悩んだのは、編集部から「派手めに」と指定されたウェザリングでした。「派手めに」といわれても、宇宙でのそれらしい汚れ具合というのがよくわからない。今回の企画内設定では、外装は塗装されていない(プライマー的なものだけが塗布されている)ことになっている、とのことでしたが、そういった場合の退色表現やデブリ衝突時の擦り傷、また無重力下で塵がどのように付着するのか、といったことがなかなかイメージできませんでした。結局、『MS-IGLOO』のCG画像を参考に仕上げましたが、いかがでしょうか?
背景のマゼラン(フルスクラッチビルド)について
 特撮用にザクが攻撃を仕掛ける艦船の艦橋部分を作ってほしい、というのがもともとのオーダーでした。この場合、艦種はサラミスでもよかったのですが、作りやすさを考えて三次曲面の少ないマゼランのほうにしました。撮影の都合上艦橋の高さは100ミリ以上で、という注文があったので、バンダイ「EXモデル」マゼランの約5倍の大きさで設計することにしました。
 撮影は艦橋周辺だけの予定でしたが、アングルによっては甲板も写り込むような気がして甲板も作ることにしました。そうなると必然的に砲塔も作ることになり、成り行きで結局後部エンジン前の部分まで製作してしまいました。サイズが大きくなると重くなるので、強度を稼ぎ、かつ軽量化するために船体にアルミのパイプを通して、船体自体はベニヤ板の箱組みで製作します。
 甲板上の砲塔部分については、アルミ削り出しの砲身を使用し、砲塔をABS板の削り出しで製作、これらのパーツをレジンで複製したものを使用しました。
 また、艦橋の電飾は超高輝度の発光ダイオードを使用しています。これは明るく熱量も少ないので模型にはよいのですが、光の拡散角が狭く1個で四方を明るくすることはできないようです。今回は艦橋内部に反射板を入れて対応しました。アンテナにも電飾を施しており、翼端灯っぽい感じを出すために赤色ダイオードを使用してみました。
 できあがった本を見てから思ったことですが、ほかのページに掲載されているムサイやホワイトベースの作例に比べてモールドが少なすぎたので、誌面上のバランスをとるためにウェザリングをもっと派手に強く入れたほうがよかったかもしれません。