10式戦車が、90式戦車と共に存在感を示す
2014年(平成26)8月23日、陸上自衛隊の「富士総合火力演習」の取材で、静岡県御殿場に赴いた。
編集部として注目したのは、新しい装備と、日本を巡る国際情勢の変化が、演習にどのように反映されているのだろうか、という2つの点。取材レポート1では、まず装備に重点を置いてレポートしよう。
現在、陸上自衛隊は装備の更新を進めているが、その中でも10式戦車は注目の新装備の一つ。日本戦車としては初めて、アメリカ軍が装備を進めているC4Iと呼ばれる、データ共有・指揮通信システムを装備した(アメリカ軍との共同作戦に不可欠)ことに加え、現在主力の90式戦車よりも小型化・高機動力の実現・装甲防御の改善(装甲のモジュール化)、といった項目で進化が図られている。2012年から部隊配備が始まっているが、今回の演習では、90式戦車とほぼ同数が参加して、高い機動力を見せた。
90式や10式の登場で数を減らしつつある74式戦車は、今回も参加した。戦車ファンの間では「いつまで演習地で見られるだろうか」という点も話題になりつつある74式だが、120ミリ滑腔砲がスタンダードとなりつつある中で、今となってはかなり貴重になりつつある105ミリライフル(旋条入り)砲塔載戦車として、元気(?)な姿を見ている。
対戦車戦闘用の装備としてはもう一つ、中距離多目的誘導弾も注目。現在、最も新しい対舟艇・対戦車ミサイル・システムで、特徴としては第3世代と呼ばれる誘導に複数方式を併用(光波・レーダー)し、撃ちっ放し能力を有していること。ミサイルのキャニスター(格納・射出部)と誘導装置を一体化(分離使用も可能)したシステムを高機動車に搭載し、1台で多目標に対応可能な高性能自走ミサイルランチャーだ。多目的誘導弾システムとしては、96式がすでに配備されているが、車両とセットで約27億円、ミサイル1発5000万円という高価格がネックになり、代わってより安価といわれる本システムの配備が進んでいる。対戦車部隊の再編も、本システムを中心に進められているようだ。
その他にも、すでに近年の演習ではお馴染みとなっている火砲、ミサイルランチャー塔載の自走車両が登場した。これらの車両は、取材レポート2で紹介する。