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歴群編集部の美術―REKIGUN;THE ART OF STAFF ROOM

歴史雑誌の製作で一番頭を悩ますのが、ビジュアル部分。なにしろ写真が無い時代だったりする。そこでコスプレすることでイメージカットを創れないか…という発想から始まったのが、これから紹介する衣装と小道具の数々。本来、時代劇の衣装を借りてくれば良かったのかもしれないのだが、そこは『歴史群像』。実は可能な範囲で最新の学説をもとにした考証をおこなっているのである。

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銅造太刀

AKAGANE TSUKURI-TACHI

丸武産業製の黄金造太刀を改装。柄糸と太刀緒を黒に換え(太刀緒は染め直した)、金メッキの金物はそのままでは塗装できないので、薄い和紙を張り、その上から模型用パテを塗り下地処理をしたうえで銅色に塗ってある。


革包太刀

KAWAZUTSUMI-TACHI

同じく、丸武産業製の黄金造太刀を改装。薄く溶いたアクリル塗料を何度も染み込ませて革状にした障子紙を鞘と柄に巻いて革包太刀とした。モデルにしたのは北条時頼所用の「国綱(名物 鬼丸)」と細川幽斎所用の「古今伝授行平」。


革包太刀

KAWAZUTSUMI-TACHI

彦根城での撮影中に壊れた某社製の模擬太刀を改装。柄糸は皮製(スペイン製)。太刀緒を通す「足」も革から自作。ただし「足」を留めるための「太鼓金」は、戦車のプラモデルの部品を利用したため強度不足で撮影中に再度破損した。『学研デジタル歴史館』「彦根城の歩き方」と『歴史群像No.86』「戦国の長柄鑓」に使用。


打刀(柄)

UCHIGATANA(TSUKA)

刀の自作や改装の際にネックとなる柄糸もこのとおり。練習すれば巻けるようになる。おそらく戦国期には、武士も足軽も自分たちで柄糸を巻いていたのだろう。柄糸は桃山時代の華やかさを出したかったので啄木織の糸(五月人形用)を使用。また鍔は江戸期の脇差用のやや小ぶりなものを付けた。一部に本歌(本物)を使用するとグッとリアルになる。


腰刀

KOSHIGATANA

合口造りの腰刀。柄糸と下緒以外はすべてホームセンターで購入した材料で制作。その値〆て500円。ただし、つくりは本格的で、本物の鞘と柄に順じた構造である。塗装は漆の質感を出したかったのでアクリル塗料を何度も重ね塗りしたが塗膜が弱く、臭いのを我慢しても「カシュー(擬似漆)」を使用すればよかった。

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UTSUBO

未完成だが、あまりにもマニアックなのでここに掲載。主な材料は竹篭編みの漁具。現存する靫のほとんどは大名使用の高級品だが、これは足軽用の御貸し道具を想定して作製。 ちなみに靫に矢を入れるさいは、鏃を下にする(上部が膨らんでいるのは矢羽根が潰れないため)。米原市主催の『上平寺まつり』で使用したため、京極氏の「四つ目結」紋が入っている。


旗指物 織田家(永楽通宝銭)

HATASASHIMONO ODA-Ke

ご存知「永楽通宝銭」の織田家旗指物。旗ざおが入る部分が袋縫いとなっているが、これが当時一般的だったようだ。『歴史群像No.74』「天正伊賀の乱」、『歴史群像No.76』「越前朝倉興亡記」に使用。


旗指物 井伊家(赤地に金の井桁)

HATASASHIMONO I I-Ke

関ヶ原合戦図屏風等を資料に作製した。金箔部分はアクリル絵の具。『学研デジタル歴史館』「彦根城の歩き方」で使用。


旗指物(撓い) 真田家(黒地に白の六連銭)

HATASASHIMONO(SHINAI) SANADA-Ke

旗指物のうち、旗を支える上部の横棒が入ってない形状のものを「撓い」という。武田氏古文書の「軍役定書」にある、旗指物は「四半(正方形)」または「撓い」の文言をもとに作製した。『歴史群像No.86』「戦国の長柄鑓」に使用。


旗指物(撓い) 武田家使番(百足)

HATASASHIMONO(SHINAI) TAKEDA-Ke TSUKAIBAN

この旗も、戦国ファンには有名だが、百足の紋様は各種ある。なお撓いにして金と銀にしたのは『甲陽軍鑑』の記述から。『歴史群像No.83』「真説・百足衆」で使用。

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錆地筋兜・紺糸威二枚胴具足

SABIJISUJI-KABUTO・KONITOODOSHI
NIMAIDO-GUSOKU

袖と兜は近年作られた「新物(あらもの)」。他は江戸期の「本歌」。揃いではなく骨董市などで部品をこつこつ集めたものを修理した。修理の過程でわかったのだが、胴部分の威し糸は装飾で、実際は犬皮から作った糸で繋ぎとめている。『歴史群像No.83』「真説・百足衆」で使用。


三枚頭形兜

SANMAIJIKORO ZUNARI-KABUTO

紙製で米軍のM1ヘルメットのライナーが原型。兜櫃もダンボールのミカン箱が素材。実際の頭形兜はもう少し小さく、また曲面も緩い。ちなみにこれを見た自衛官は一発で原型を言い当てた。


紺糸威桃形兜・胸取桶側胴具足(赤備)

MOMONARI-KABUTO・MUNATORI
OKEGAWADO-GUSOKU(AKAZONAE)

丸武産業製。弊誌編集部特注。『歴史群像No.86』「戦国の長柄鑓」に使用。


陣笠

JIN-GASA

この笠も紙製。強度を出すために縁に折り返しを付けてある。『歴史群像No.83』「戦国の城 彦根城」と弊誌ホームページ『学研デジタル歴史館』「彦根城の歩き方」で使用。

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陣羽織・指揮杖(竹製)

JINBAORI・SHIKI-TSUE

陣羽織を鎧に着せたところ。衿の模様は「横段」という。指揮杖は、透漆のつもりでアクリル塗料を塗ったのだが、あまり効果がでなかった。


陣羽織(兎紋)

JINBAORI(USAGI-MON)

兎の文様は、多産であることから当時、装飾に良く使用された。デザインした人間にいわせると、ドイツ軍で古参兵のことを「アルターハイゼ=年寄り兎」と言うことに引っ掛けたとか……。


陣羽織(百足紋)

JINBAORI(MUKADE-MON)

ムカデの紋様。百足は、摩利支天(または毘沙門天)の使いと言われるだけでなく、後ろに退かず、体をちぎられても死なないことから戦国期には兜の立物などにも使われた。

鉄炮・銃床

TEPPO

江戸期の本歌だが肝心の銃身はもとより、からくりも取り去られ、わずかに引き鉄だけが残る。鉄砲の製作のネックとなる銃床があるのは、製作者には朗報だが、しかしこれが撮影用に甦るのか。歴史を趣味とするものとして大きな楽しみである。剋目して待て!(で、誰がつくるのよ!!)