撞球室
■施工:明治40年(1907)以降
■設計:ジョサイア・コンドル
■所在地:旧岩崎邸庭園内
■構造/木造1階建、スレート葺
■保存区分:重要文化財
木造の遊技場で、撞球とはビリヤードのことです。地上1階の平屋ですが、煉瓦造りの地下室があり、洋館と通路でつながっています。荒天時でも来客を雨に濡らさずに撞球室に案内する気遣いだったのでしょうか。
設計はジョサイア・コンドルですが、洋館とは全く異なる、明治期の日本では珍しい、中部ヨーロッパ、たとえばスイスなどの高地や山岳地域の山小屋風の建物です。手前に大きく張り出した三角屋根が特徴的で、壁面はログハウス風の木組みで構成されていますが、カナダの山小屋等に見られる丸太そのままの造りではなく、面取りされた木材を組んでいるところに特徴があります。窓はステンドグラスがはめ込まれており、窓自体は方形ですが、屋根の直下にある採光窓にはアーチ形状が取り入れられています。
内部は通常は非公開で、一般公開は期間限定になっています。、屋根は板張りの天井ではなく梁が組まれており、こちらの壁面も金唐革紙を使用した壁紙が貼られており、欧風の造りに和風をうまく融合させています。
ところでこの壁面、戦後に進駐軍が使用した際に白ペンキで塗られてしまい、返還後の復旧の際に元の色が分からなくなってしまったそうです。ところが、壁面のランプ金具などを外したところ、その地の部分はペンキが塗られておらず、そこから建築当時の色を判別できたとのこと。室内には桜材でできた円柱状の版木も展示されています。洋館同様、壁面そのものは手を触れることが禁止されているため、来場者が壁紙の感触を確かめられるように触ることができる見本が展示されています。
上段
(左)魚鱗状の木材が貼られたうろこ壁と、半円形の採光窓。屋根はスレート材が貼られている。
(右)壁面はログハウス風の校倉風造り。入口手前は長椅子が置かれたベランダになっている。
(左)撞球室の内部。
下段
(左)天井は格子組みとアーチを組み合わせた独特なデザインが見どころ。
(右)壁面から張り出した暖炉。この右奥が地下に降りる階段室になっている。
(右・下)撞球室の地下室と洋館に繋がる通路。地下部分は煉瓦造りで、途中には採光用のくぼみがあり、壁面は煉瓦に陶器の表面処理を施してタイル状にしたものが貼られている。
(左)通路の途中にあるスペース。ここで右に通路が曲がっている。 (右)本館側の通路。左右に扉が見える。
和館
■施工:1896年
■設計:岡本春道
■所在地:旧岩崎邸庭園
■構造/木造、桟瓦及び銅板葺の平屋
■保存区分:重要文化財
施工は、明治期に政財界の要人の邸宅を手掛けたという棟梁・大河喜十郎(施工中に念仏を唱えることから「念仏喜十」などの異名を持つ名工)が行ったといわれています。
(左)襖絵と障子に挟まれた畳み敷きの廊下。天井は板張りだが、節目のない高級材が使われている。
(右)幕末~明治の日本画家・橋本雅邦の筆による壁画が残されている大広間。
開園時間=午前9時~午後5時 (入園は午後4時30分まで)/休園日=年末・年始 (12月29日~翌年1月1日まで)/入園料=一般及び中学生400円、65歳以上 200円(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)/無料公開日=みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)/建物内は撮影禁止です。