
【第10回】『バンド・オブ・ブラザース』 (2001・アメリカ)
発売元:ショウゲート
販売元:アミューズソフトエンタテインメント
作品名:バンド・オブ・ブラザース コンプリート・ボックス
価格:¥13,125(税込) 5枚組(全10話・各巻2話収録)
DVD発売中
今回もまた私のバアイTVシリーズで恐縮なのだが、『バンド・オブ・ブラザース』である。このタイトル、シェークスピアは『ヘンリー5世』の台詞から。日本軍用語に意訳すると「骨肉の情愛」か。さて、本作品は、第2次大戦のヨーロッパ戦線で戦った第101空挺師団第506落下傘歩兵連隊E中隊の活躍を史実に基づいて構成した久々の本格的戦争ドラマだ。制作は『プライベート・ライアン』のスティーブン・スピルバーグとトム・ハンクス(ハンクスは監督も)。
さて、この作品を観た最初の感想が、「巧いなぁ」というものだった。例えば最近の小説で言うなら浅田次郎の作品。感動させてやるぞ、ってのがミエミエなんだけど、それでも感動しちゃう。それと同じ。
なんかこう書くと、『バンド・オブ・ブラザース』って、すごくあざとい感じがするのだが、そんなことはない。感動を狙って感動させるなんざ、まさにプロのワザ、なのである。じゃ、どこが巧いのか。
まずは、部隊(舞台)が空挺部隊であること。周知のように101空挺師団はヨーロッパの戦場のおいしいトコ取りの部隊なんだけど、それだけではない。彼らは全員志願兵。だから戦争を人間ドラマとして描く作品にとって避けては通れない“反戦”の部分を描かずに済むのだ。このご時世にありながらも、である。むろん本作においても「反戦ちっく」な部分(第3、7話)は、存在するのだが、それはあくまでもアクションを盛り上げるためのスパイスでしかない。おかげさまで観ている方は安心である。
ところで、空挺部隊というのは、地上に降りれば、単なる軽歩兵でしかないのだけれど、それも本作を盛り上げる重要な要素。彼らは強大な敵に対して“小銃と銃剣”で戦うしかないという、本質的にアクションもののヒーローになることを運命付けられているのだ。
そのうえ、複雑で捉えどころのない近現代戦、つまり、リアルに描くと、ワケがわからなくなる戦闘様相も、空挺部隊ならば基本的に歩兵単独の戦いだから、最近のお客さんが要求する「リアル」さと「分かり易さ」を両立できるのである。
もっとも、戦史に詳しい読者諸兄は、ドイツ軍が弱すぎるとの印象を抱くと思われるが、負け戦や、負ける瞬間というのは、実はあんなものなのかもしれない。スポーツの世界でも、強いチームや選手が負ける時って、けっこう間抜けでしょ。
さらに、空挺部隊であること自体が本作の「巧さ」につながる「絶対条件」なのだが、これは後で述べよう。
次いで、ドラマを盛り上げるのが俳優達の演技。正しくは演技ならざる演技の部分である。彼らの立ち振る舞いは、新兵から古参兵へと変わっていく姿を実に自然に見せている。とくに、第9話を観た後、もう一度第1話を観るとその変化にビックリする。さらにひとつ注意してほしいのが同じ階級同士での掛け合い。冷静な将校も強面の下士官も一皮むけば単なるアメリカの兄ちゃん達である。ふつうの人たちの、ふつうならざる物語こそが戦争ドラマの醍醐味だったら、これはやっぱり「巧いなぁ」とため息が出る。ビバ!! 市民の軍隊。
さて、後回しにした空挺部隊を舞台としたこのドラマの巧さの本質的な部分だ。
ドラマの主題はタイトルにあるように極限状態故に生まれる「人と人の結び付き」である。だが、兵隊を個々に補充する米軍のシステムでは、こうした「絆」は空挺のような特殊技能を持つ兵員からなる部隊などでしか、生まれなかったのが本当のところ。希な話を普遍的な物語に仕上げるなんて「巧いなぁ」。皆が復員して離ればなれになる最終回で、私、泣きましたから。ここまで冷静に分析していて。
(文=陸軍取扱中尉)
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【第9回】『ペティコート作戦』(1959・アメリカ)
戦争映画は人間ドラマの宝庫であることから、コメディーも多数作られている。この方面の作品としては、戦いのどさくさにまぎれてナチスの金塊を奪おうとする連合軍兵士たちを描いた「戦略大作戦」(C・イーストウッド主演)が有名だが、今回ご紹介するのは潜水艦コメディー(そんなジャンル、あるのか?)「ペティコート作戦」だ。
太平洋戦争当時、就役したばかりの米海軍潜水艦『シー・タイガー』は、フィリピンで日本軍の攻撃を受け半壊状態に陥る。艦長(ケーリー・グラント)は同艦を二週間で修理し、完璧な補給が受けられるセブ島への脱出を画策するが、物資不足で悪戦苦闘。そこへ任官してきたホールデン大尉(トニー・カーチス)――提督夫人とペアを組んでルンバ大会で優勝したことが自慢の女ったらし――が、持ち前のウラ技で物資を調達し、『シー・タイガー』は無事(?)、出港することになる。だがこれは波乱の、いや度重なるズッコケの始まりに過ぎなかった。
見どころの一つは、軽妙かつ粋な台詞の言い回し。非合法な手段で物資を手に入れた事に関して、堅物の艦長が「今のような非常時では、ストリップ見学と同じで現れたものを素直に喜べ!」と部下を説得したり、応急修理しかできず、依然としてボロボロの状態の艦について「この艦は潜れるか」との質問に、「岩のように」と答え、一瞬複雑な表情を見せる(この意味がわかれば、あなたも立派な潜水艦乗りだ!)など、絶妙なテンポで展開される。
そして見どころの第二は、軍隊の日常が破壊され、それによって生じるズレが笑いに昇華していることだ。途中から数人の女性軍属が乗り込み、規律ある男所帯の艦内が突然、混乱状態に陥るところなど、演出の妙もあって嫌味なく楽しめる。軍艦の中でもただでさえ狭い潜水艦の通路を生かしたシーンなどはテンポがよく、秀逸である。
そしてこの「軍隊の日常破壊」が頂点に達するのが、物語の後半、あり合わせのペンキで塗装した『シー・タイガー』がピンク一色になるところ。青い海原に、突然ピンク色の潜水艦が遠くに浮上するシーンは、なまじ普通の戦争映画と同じようなアングルで撮っているのでかなりシュールだ。潜水艦と駆逐艦の死闘を描いた名作『眼下の敵』が好きなワタクシとしては、さりげなく描かれてはいたが、このシーンで大笑いしたものである。そのくせ結末は、海軍独特のちょっと粋なオチとなっている。
スマートな海軍軍人にケーリー・グラント、お調子者で女ったらしの大尉にトニー・カーチスと、これはまさに50~60年代の王道的配役で、オールド映画ファンには懐かしいキャスティングだ。20代の若い人は知らないかもしれないけれど、お祖父さん、お祖母さんが夢中になった時代の俳優の演技を、これを機会に楽しんでみてください。
軍隊とは「権威」である。しかしその裏では、兵士が奇天然な手段で物資を調達したり、鳴り物入りで配備された新兵器がおマヌケな性能を発揮したりと、「権威崩壊」の実例がてんこ盛りなのが実状だ。そもそも恥ずかしい面を取り繕おうとする「権威」を、嫌味なく引っぺがすことがコメディー成立の要素のひとつなのである。戦争コメディーとは、こうした「権威」と「おマヌケ」のズレをテーマとしたものであり、本作「ペティコート作戦」はこの点で大成功しているといえる。
ところで、堅物の艦長以上に情けなさを感じているのは、女性の下着を艦内で干され、体をピンク色に塗りたくられた当の『シー・タイガー』だとワタクシはにらんでいるのだが。
DVD発売元:(株)東北新社
作品名:ペティコート作戦
監督:ブレーク・エドワーズ
価格:¥3,990(税込)生産終了・廃盤
(文=バイオ大森)
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