THE WAR MOVIE セレクション

【第8回】『クルセイダーズ』(2001・ドイツ=イタリア)

 欧米の十字軍映画は戦前からあったが、しばらく見かけなかった。「神の軍隊」の実態はすでに明らかだし、今日でも国際政治の舞台で引き合いに出されるなど、扱いが難しいからだろうか。
 そんな中、2005年にリドリー・スコット監督の大作『キングダム・オブ・ヘブン』が公開されて、大きなブランクが埋められた。個人的には主役のオーランド・ブルームは頼りないし、テンプル騎士団がステレオタイプな悪役で気に食わないし、ラストでエルサレム防衛軍が、俄仕立ての癖にイスラム軍を殺しまくって死体の山を築く描写もむかついたが、渋ーいシリア俳優、ハッサン・マスード演ずる、イスラムの英雄サラディンが見られたのだけは儲けものだった。それにしても彼の最大の勝利ハッティンの戦闘場面が描かれないのにはガッカリ。
 さてこの『クルセイダーズ』は、『キングダム・オブ・ヘブン』公開4年前に、突然DVDが発売されて歴史ファンを喜ばせた日本未公開作品で、『キングダム……』とは異なり派手なCG場面こそないが、手作り感あふれる力作であった。
 テレビ用に制作されたようだが、第一次十字軍遠征を背景に、これに参加した三人の若者の友情と葛藤を描く青春ドラマで、モロッコにロケしたスケールの大きな作品である。
 ムスリムの父とクリスチャンの母の間に生まれ、そのルーツを求めるピーター。信仰心と栄達への野望から参加するアンドルー。領主の息子ながら、内紛で父を殺され、自らも追われる身となったリチャード。熱い友情で結ばれたこの三人は「野蛮な異教徒から」聖地を奪還すべく十字軍に参加するが、その実態は理想とは大違い。略奪のために無関係なユダヤ人を殺戮し、ユダヤ・キリスト・イスラム教徒が平和に共存しているエルサレムに向かって進軍する。そんな現実の中で三人も異なる道を進むことに。イスラム軍に投ずるピーター、十字軍の先鋒に立つアンドルー、和平の道を探り始めるリチャード。彼らは戦火燃えるエルサレムで運命の時を迎える、といったストーリー。
 クライマックスの、城壁の殺到する十字軍の大群は相当の迫力。今時の作品ながら、少人数をCGで水増ししたりせず、大量のエキストラを投入しているのも魅力だ。攻城塔や投石器で攻撃する十字軍に対し、燃える油を浴びせかけるイスラム軍。さらにはあの伝説の火炎放射器「キリシア火」が登場し、攻城塔めがけて火を噴くが……。
 さて、『クルセイダーズ』のように、欧米ではコンスタントに戦史を題材にしたテレビドラマが作られているようだが、日本は史劇には冷たく、ほとんど輸入されていない。歴史もの映画の製作も一段落した感のある昨今、もっと放映・ビデオ化して我々を喜ばせて欲しいものだ。

 
DVD発売元:プライムウェーブ
作品名:クルセイダーズ
監督:ドミニク・オッセン・ジラード

(文=テルシオ・工藤)

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【第7回】『遊撃戦』(1966~67・日本)

遊撃戦

発売元:キングレコード株式会社
作品名:遊撃戦
監修:岡本喜八
監督:竹林進/山本迪夫
価格:全3巻13話VOL1(第1~第4話)
VOL2(第5~第8話)、VOL3(第9~第13話)
各¥3,990(税込)好評発売中

 昭和41年といえば、不朽の戦争ドラマ『コンバット』の日本での放映が始まった、まことに慶賀すべき年であるのだが、その『コンバット』に負けない日本製戦争ドラマが、日本テレビ系列で放映されていたのはご存知であろうか。それが『遊撃戦』である。
 『遊撃戦』は、中国戦線を舞台に、中国兵に変装した一癖も二癖もある連中が、B29の発進基地桂林を破壊しに行くという設定で、そのうえ桂林までの道中で様々な人や事件に遭遇するというロード・ムービーでもある。いわば娯楽戦争映画の黄金パターン。で、監修は岡本喜八。あぁ見たい!!
 というわけで、なぜ、岡本喜八だと見たくなっちゃうのか。かの名作『独立愚連隊』シリーズをご覧になった方はおわかりだと思うが、日本映画がもっとも苦手とする娯楽戦争映画の名手が岡本喜八だからである。『遊撃戦』での、岡本の役割は監修と脚本の一部のみだが、岡本組の助監督たちが、親分に負けない演出をしている。
 岡本作品の面白さは、よく練られた脚本、とくに計算された台詞と、アップ・テンポな演出にあるといわれてるが、むろんそれ以外にもある。本作をネタにそれを探ってみよう。
 一つは岡本がガンマニアであること。主人公たちが持つ銃は、モーゼル・ミリタリーPPSh41短機関銃、チェッコの愛称で知られるZB26軽機関銃。いかにも敵の装備を使う遊撃隊、いかにも中国戦線。この「いかにも」が大切。アクションでは武器も重要なキャラクターなのだ。たしかに昔の作品ゆえ、今から見ればちゃちなアクションかもしれない。でも今のドラマのアクションも充分ダサイぞ。
 さらに、「いかにも感」を盛り上げるのが、全編の半分以上で交わされる中国語だ(出演者は全員日本人)。ドイツ語の様な英語や、ロシア語のような英語を使って、恬として恥じないハリウッド映画めまいったか。ちなみに、この言葉の問題は、本作最大のスラップスティックとなる第八話で重要な“役”となる。
 また音楽(佐藤勝)の使い方も良い。第12話のオープニングの、空挺部隊の降下 ―― 一部に戦中のドキュメント『空の神兵』のフィルムが使われる ―― に合わせて流れる軽快なメインテーマは、失敗に終わる空挺作戦を実にカッコ良くみせる。シリーズ中もっとも悲劇的な第11話のラスト・シーンにもこの音楽が効果的に使われていて、日本の戦争映画によく見られる「お涙頂戴」に堕さないのだ。
 さて、岡本喜八の戦争モノにあるコメティー・タッチの特徴だが、これは軍隊の慣習や軍紀を利用するのが、べらぼうに上手いというところにある。ある種『満期操典』を思わせるものがある。とくに第一話では、こうした軍隊での様々な習慣を利用して登場人物の性格や背景の説明までしてしまう。なにしろ兵隊が兵隊らしいのである。こうした「らしさ」や「いかにも」がなければ、物語はリアリティーを失うし、兵隊らしくないところが面目の、遊撃隊のキャラクターが成立しない。
 しかし、こうした特異な作品を創る岡本喜八って、なんか不思議な人である。学徒将校として松戸工兵学校で受けた、対戦車特攻訓練でなにを感じたのだろう。いや、不思議なのは、岡本の映画が特異とされる日本映画界のほうか。
 その後、彼は大作『日本の一番長い日』を経て、『肉弾』『英霊たちの応援歌』という反戦映画の傑作を創るが、本作をふくめその戦争映画の本質は、実は「反戦」を超えたところにある「反軍映画」だったのではあるまいか。

(文=陸軍取扱中尉)

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