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日本の歴史を牽引してきた~鉄道遺構を訪ねる

「信越本線・碓氷線」横川駅~峠の湯①
日本初のアプト式を採用! 鉄道廃線跡をたどる!!
 信越本線の高崎~横川間が開通したのは1885年(明治18)のこと。1888年(明治21)には碓氷峠をはさんで反対側の直江津~軽井沢間が開通している。最大の難所であった碓氷峠越えのルートは、わずか11.2㎞の距離だが標高差553mの急勾配だったため、ループ、ケーブル、スイッチバックなどさまざまな方式が検討され、最終的にドイツのハルツ山岳鉄道と同じアプト式が採用された。アプト式とは左右のレールの間にラックレールと呼ばれる歯車のレールが敷設され、この歯車を機関車の歯車と噛みあわせて運行する方式のこと。工事は1891年(明治24)に着工、トンネル26ヶ所、橋梁が18ヶ所もある大工事だったが、わずか1年9ヶ月という驚異的なスピードで完成し、1893年(明治26)にドイツから輸入した蒸気機関車を利用して開通した。この時、横川から軽井沢までは約80分の運行時間だったという。
 その後、トンネルの多い碓氷線は、運行時間の長さや機関車の排煙問題などを解決するため、幹線で最初の電化が行われ、1912年(明治45)にドイツより輸入された10000形電気機関車が運行。所要時間は約50分に短縮された。さらに1934年(昭和9)には、純国産のED42形電気機関車を配備、SL時代に比べ6倍の輸送力に改良されたが、一般の路線に比較すればはるかに低い輸送力で、新たな対応が求められた。

横川~軽井沢間専用の機関車
  EF63形電気機関車(ロクサン)登場!

↑EF63形電気機関車。電車・機関車との協調運転用の重装備が見どころ。

 1963年(昭和38)に運行された新型機関車(EF63)は、磁力を利用した「粘着運転」を採用。ここに約70年間続いたアプト式運転は廃止され、新たに新線も開通した。輸送力は一段とアップし、約20分で峠を越えることができるようになった。
 この旧線時代のルートにはレンガ造りの橋やトンネルなどが今も残っており、これらの鉄道施設は国の重要文化財にも指定されている。歴史ある碓氷線も1997年(平成9)の新幹線開通により廃線となってしまったが、アプト式線路跡は遊歩道として整備されている。峠のシェルパとして知られた「ロクサン」が力強い走りを見せていた当時を偲びながら、自然の中を散策してみたい。

横川駅

↑現在の横川駅は信越本線の終着駅。ちなみに軽井沢から先の信越本線は「しなの鉄道」となっている。

 駅の開業は1885年(明治18)。1888年からアプト式鉄道が開通するまでは、横川~軽井沢間に碓氷馬車鉄道が走っていた。新幹線の開通により、現在は信越本線の終着駅となっている。かつては碓氷峠越えの拠点となった駅で、急勾配を上り下りするためにすべての列車がここで補機となる機関車を連結した。連結作業で長時間停車するため、その時間を利用して乗客が購入していたのが有名な駅弁「峠の釜めし」だ。釜めしは駅横の売店か駅前の「おぎのや」で購入できる。GWやお盆、秋の行楽シーズンには、販売員がホームに立ち、かつての姿で販売を行っている。

↑横川駅の駅構内。

↑小ぢんまりとした横川駅。
→横川駅裏手の駐車場には、軽井沢へと向かった4番線ホームからの線路が残る。

↑横川駅前にある排水溝のフタは、アプト式線路のラックレールを再利用したもの。かつてはアプト式電気機関車ED42がこの歯車を噛みながら碓氷峠を上り下りしていた。

↑横川駅前に展示されている「EF63-3号」機関車の動輪。1997年の碓氷線廃止まで現役として働いていた。

↑横川駅のそば「鉄道文化むら」の前にあるガードレールは蒸気機関車の形。

↑50年の歴史を誇る「峠の釜めし」900円を販売する駅の売店。自然食として隠れファンが多い「玄米弁当」500円もおすすめ。

↑創業120余年、峠の釜めしで知られる「おぎのや本店」は、横川駅のすぐ目の前。店内でも食べられる。

インフォメーション クリックしてください  

↑「おぎのや資料館」 駅弁や峠の釜めしに関するものを中心に、鉄道関連の資料などを展示する。横川駅前右手にある。入場無料。

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碓氷峠鉄道文化むら

↑展示されている車両には実際に乗り込むことができるものもある。
←D51(デゴイチ)をはじめとする貴重な車両が並ぶ。

 碓氷峠の歴史や資料、碓氷峠で活躍したEF63形電気機関車をはじめとする鉄道車両、国鉄時代の貴重な車両などを展示公開するテーマパーク。旧横川機関区の跡地に建てられており、昔の検修車庫などがそのまま展示館として公開されている。園内には蒸気機関車、ディーゼルカー、電気機関車、寝台車、食堂車、荷物車、ラッセル車などがズラリと並ぶ。園内を1周する蒸気機関車「あぷとくん」や峠の湯とむすぶトロッコ列車の「シェルパくん」の乗車体験ができるほか、講習を受ければ実際に「EF63形機関車」を体験運転することも可能だ。 インフォメーション クリックしてください  


●碓氷峠鉄道文化むらの保存車両リスト

↑鉄道資料館には碓氷線の鉄道歴史資料が展示されているほか、HOゲージ、Nゲージ模型の体験運転コーナー(有料)などもある。

←↑レールの中央にラックレールが敷かれたアプト式レールと機関車の動輪。入り口を入って右手に敷設されている。

↑峠のシェルパ(荷物運び・案内人の意)と呼ばれたEF63形電気機関車と運転席。碓氷峠を越える際には、列車の機関車に加え、EF63形、EF62形などが前後に連結され協調運転をしながら運行した。ちなみに頭のEは電気機関車、Dは動輪の数を表している。Cは3対、Dは4対の動輪を持つということ。

↑純国産のアプト式電気機関車「ED42形」。昭和9年に製作された第1号機で、昭和38年まで活躍した。

↑蒸気機関車「あぷとくん」。イギリスから輸入されたミニSLで園内を一周できる。一周約800m、1回400円。

↑トロッコ列車「シェルパくん」。旧信越線の線路を利用、「ぶんかむら駅」から「まるやま駅」を経由して「とうげのゆ駅」まで運行している。

↑珍しいラッセル車(除雪用車両)も展示されている。