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機動戦士ガンダム 一年戦争全史 U.C.0079-0080〈上〉〈下〉 模型作品解説

1/400ホワイトベースのディテールアップ

製作・文/柿沼秀樹   使用キット/バンダイ ガンダムコレクション 1/400ホワイトベース

上巻のムサイに続き、同じく1/400大型キット「ガンダムコレクション」のホワイトベースをSF映画プロップ風にディテールアップする。劇中の戦艦群のなかでもキャラクター性の強いデザインのホワイトベースを、“兵器”に変貌させるべく、苦難の連続に再び挑む!
本来はお勧めできない工作、
  其の2「ホワイトベース」
 このホワイトベースの場合も『一年戦争全史』下巻用にホワイトベースの解説用イラストを描く代わりに1/400の大型キットをディテールアップすることにしたものだ。これも“1/400スケールモデルキット”となっているが、1/400モビルスーツ・フィギュアの収納ケースとしても使用できるアイテムであるため、材質はやはりABS樹脂で、ムサイ同様ディテールアップはなかなか困難だ。
 しかし全体的に組み立てやすいキットで、サイズは大きいが各部分の強度はしっかり確保されている。また、このキットはファースト・ガンダム劇中のイメージを優先したシンプルな出来になっており、表面モールドなどは「どうぞディテールアップしてください」と言わんばかりにシンプルなので、工作意欲をかき立てられるのは確かだ。白くて広い面があるとむしょうにディテールアップしたくなる変な性癖を持っている筆者にとっては黙っておれない対象なのである。
 前述のとおりABS樹脂は通常のプラモデル工作の際、威力を発揮する便利な“流し込み式接着剤”などが使えず、勝手が違う。しかし現在は瞬間接着剤でもハケ付きの流し込み式のものがあるので、それを多用しての工作となった。
ディテールアップ
 ムサイ同様「一年戦争」を実際の史実として表現する、というコンセプトの本に使用するものなので、ホワイトベースも実在したならどんなディテールなのだろうか?という考察を繰り返していく。それに、巨大に見えるような“記号”も必要だ。宇宙を航行し、モビルスーツのキャリアであり揚陸艦である、という設定から想像を膨らませていく。揚陸艦なのに前面投影面積がこんなに大きくていいのだろうか?とか、いやいや前面は他所の何倍もの装甲があるのでは?などなどと真剣に考えるのである。
 大気圏突入能力がある、という最大のアイデンティティは無視できないため、細かい突起物はその際すべて艦内に収納されると仮定して、艦橋付近には多数の(光学)通信用の送受信筒を追加した。本体からブリッジ・タワー側面かけては、被弾した際、高圧ガスや高圧線が外部へ吹き飛ぶように露出させてあるなどなどと想定して、多数のパイプ類をジャンクパーツを使って付け足してある。各所にそんな設定を勝手に付け足していくことが重要だ。ブリッジ後方の平坦な空間は、モビルスーツの非常用ランディングスペースらしいので、オーバーランしたときにブリッジを直撃しないように、衝突防止バーが必要だろう……などなどと想定していくのは、締め切りさえなければ楽しい作業だったかもしれない。
 工作途中の写真を見ればわかるとおり、各所表面を全部覆う勢いでジャンクパーツとプラ板で凹凸を付け、使用したジャンクパーツは200点まで数えたが、それ以上は数えていない。今回のジャンクパーツは、『スター・ウォーズ』のチーフモデラー、グラント・マッキューンがスタジオモデル製作時に好んで使ったハセガワの列車砲を2箱も買い足して使用している。しかし完成し塗装が済むと意外と簡素な感じになったようだ。やり過ぎないように、としたのがいけなかったのかもしれない。この倍くらい使用しても良かったような気がする。
塗装
 ホワイトベースは新造艦なのでエイジング(経年退色感)は必要ないとしても、地球へ向かう道程で受けたダメージは、劇中で見る限りでも相当なものなので、激しいダメージング塗装(被弾・破砕した様子)をしようとも思ったが、アニメのイメージとの乖離を恐れてそれも見送った。彩度は落としたが基本的にアニメ本編のカラーリングに従っている。エナメル系のダークグレーでウォッシングを行ない、流用デカールも各所に貼ってある。
 大きいモデルなので作りがいはあるが、なにせ表面積が大きいので塗料の使用量だけでもずいぶんなものだ。1年くらいかけて工作すると満足のいくものに仕上がるかもしれない。今回のキットも回収後(時間があれば……)さらにディテールの追加、再塗装を行ないたいと思っている。

↑大量の流用ジャンクパーツとMr.カラーのホワイトを消費して、やっと完成したホワイトベース。トリコロール・カラーと、のっぺりした部分が目立つデザインのため、キットのままだとどうしても玩具っぽい印象が強くなってしまうが、ここまでの追加ディテールを施し、細かな陰影を与えてやれば、見違えるほどのスケール感が出てくる。ただし、工作にあたっては相当な覚悟が必要だ!