幼い頃、誰もが一度は忍者に憧れたことがあるのではないでしょうか? 手のひらに十字手裏剣を載せて「シュシュシュッ」とやった経験、ありませんか?
すっかり忍者になりきって、無謀にも高いところから飛び降りたりして……よく事故に遭わなかったものだ、といま考えると冷や汗ものだったりする思い出が、私にはあります(汗)。
さて、映画や小説でも大活躍の忍者ですが、しかし彼らは陰の存在。基礎史料も限られる中、その実態については謎が多いのが実情です。逆にいえば、だからこそ想像もふくらみ、いつの時代にも高い人気を誇っているともいえるでしょう。
とはいえ、それで納得していたら本はできません。「超人的」とされるそのイメージにいかに合理性を見いだし、また歴史的事実に則した上で、どれだけ忍者の実態に迫れるか? 記事の構成・製作にあたっては、その点を最も重視しました。
例えば「忍びの技 忍術」というパートでは、実際の忍者の行動を大まかに想定し、以下のように忍術を解説しています。
①敵地に潜入する→変装術
②堀を渡る→水術(水蜘蛛など)
③石垣や塀を登る→登術
④飛び降りる→飛術
⑤走る・歩く
→走術・歩法(抜き足・差し足・忍び足など)
⑥隠れる→隠形術(観音隠れ・狐隠れなど)
⑦忍び入る→侵入術
⑧盗み聞く→盗聴術
⑨敵と戦う→見敵術・手裏剣術・火術ほか
⑩逃げる→遁走術(火遁<かとん>・水遁<すいとん>など)
……などなどです。それぞれの術の解説は、忍者研究家の池田裕氏と、テレビや国内外で忍者ショーや忍術教室を主宰されている伊賀流忍者集団 黒党(くろんど)代表・黒井宏光氏にしていただいています。
また「忍者の系譜」では忍者誕生とその発展の歴史を詳述するほか、「忍者軍団」では伊賀者、甲賀者(「こうかもの」と読みます)、透波(すっぱ=武田忍軍)、軒猿(のきざる=上杉忍軍)、乱波(らっぱ=北条忍軍/風魔一党)、根来・雑賀衆、真田衆など、名だたる忍者集団の特徴に迫っています。
もちろん「忍び装束」や各種手裏剣ほかを扱った「忍器」も充実。さらには「伊賀・甲賀の“城”」や、屋内に仕掛けられたからくりを描く「忍者屋敷」、「忍者列伝・実在+架空編」など、どれをとっても楽しい企画が満載です。
絵空事ではない忍者。合理性に裏打ちされたその精神と実態に多角的に迫った本書。ぜひお手にとってご覧下さい。
(イラスト=シブヤユウジ、文=編集・企画担当K)